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あしたなんていらないから?

[253]  あめの  2006-07-11投稿


『あ。』




風は見事に彼女のスカートをふわりと舞わせた。


ほんと。見事に。





『ごっ…ごめっ…や、見てない!見てないから!僕見てないから…』
『ふとももまで見えた?』
『だっ!!だから見てないって!』



なんで僕がこんなに恥ずかしくならなきゃいけないんだろう。

本人はいたって冷静なのに。



『見たくせに。』

『見てない!!』

『顔が真っ赤。』

『暑いんだってば!』

『風が冷たいねってさっきまで話してたのに?』




見下されてる気分になるのは当たり前だ。


彼女の方が何枚も上手なんだ。僕よりもずっと。



『…ね。』
『なんだよ。』


僕はすっかりすねて、ふてぶてしい態度でかえした。



『昨日、"ブン"って。』
『ブン?』
『うん。呼ばれてたでしょ?』

あぁ。


『あぁ。あれ僕のあだ名なんだ。』
『あだ名?』
『わかりにくいよね。』


はははっと笑ったら、彼女はキョトンとした顔で


『なんで?なんでブンなの?』

と尋ねてくる。


それがなんだか嬉しくて
僕はすねていた事も忘れてわかりやすく説明した。


『文也の"文"ってさ、"ぶん"とも読めるでしょ?』
『あぁ!』
『そうそう。だからみんな僕のこと"ブン"って呼ぶんだよ。』


彼女があんまり納得するから、僕はちょっと得意気になった。
そして、彼女はキャンディーをもらった小さな子みたいに嬉しそうな顔をして


『あたしも"ブン"って呼ぶ。』


と呟いた。



僕はというと、よくききとれなくて、ポカンとした顔で彼女をみていた。

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