時と空の唄13-6
「…行きましょう。」
俯いたまま雪が言った。
「…いいのか?
イツキをこのままにしても」
ランスォールが問うと雪は僅かに沈黙した後答えた。
「……はい。」
「わかった。行こう。」
血と水の中にイツキを残し四人は神殿の奥に進んだ。
神殿の最深部に到達するとそこには用意されたように地下へと続く階段があった。
「…行くか。」
隣でランスォールが息を飲んだのをシーラは僅かに感じた。
「ええ。」
松明を片手に暗い地下を照らしながら進んでいく。
最初は整えられていた道もだんだんと粗悪なものになっていき、奥に行くにつれて空気も淀んできた。
ジャリジャリと音を立てて進んでいると急にランスォールが立ち止まり、そんな彼の背にシーラが軽く鼻をぶつけてしまった。
「ランス?」
横から彼の顔を覗いたあと、彼の視線の向いている方へと目を向ける。
そこにあったのは松明に照らされボンヤリと浮かび上がるように四人の行く手を阻む黒い鉄の扉だった。
「…この奥、なのね。」
「ああ、多分そうだ。」
ランスォールが頷くとシーラは鉄の扉に手を掛けた、刹那。
「きゃああっ」
「シーラっ!」
シーラの身体は黒い光に包まれその場から姿を消した。
「シーラ、シーラ!!」
彼女の名を叫ぶランスォールの声だけが虚しく虚空に僅かな余韻を残していた。
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