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航宙機動部隊前史後編・43

[513]  まっかつ改  2009-04-15投稿
その同じ銀河元号一六二二年に、もう一つ大きな展開があった。
新たなる空間跳躍技法の発見である。
きっかけは全くの偶然であった。

最終兵器処分に当たり、安全かつ迅速な手法をと、試しにとある超粒子複合体《SCM》を逆触媒として反応速度を大幅に遅らせて見た所、本来なら発生するブラックホールではなく、そこには似ても似つかぬ《親戚》の姿があった。
安定した時空の出入口―通称《エントレンス》である。
そこからはかねてより予言されていた時空の虫食い穴《ワームホール》が伸びていた。
エントレンスには様々な興味深い特徴があった。

まず、一端入口が作られると、ほぼ自動的に反対側のどこかにも必ず出口が開けられる事。
ワームホールが繋ぐ距離及び空間圧縮率は、どれもまちまちで、実際に開けて見るまで分からない事。
その中で時空集約航法をかける事が出来、しかも場合によっては目を見張る成果を上げられるものの、やはりこれも《穴次第だと言う事―\r

以上実にギャンブル性が強い側面は確かにあったが、より過酷な恒星間大戦を生き残った当時の人々からすれば、それすらも明るい希望の象徴に感じられたらしい。

彼等は早速実用化に走った。
ワームホールに安定化を図る粒子を注ぎ込み、電磁外皮膜及び内装膜を張り巡らしてしっかり舗装してやる。
こうして完成を見た宇宙の高速道路は《星間軌道》と名付けられた。

だが、技術面ではともかく、特に宙際政治面と軍事面で、新たにより深刻な問題が起こった。
一言で言えば、誰がこれを管理するのか、だ。
星間軌道は、それまで統一された文明を保持出来る限界範囲とされた半径一千光年を大きく押し広げ、新たな飛躍を人類に与えるだけの潜在性を秘めている。
と言う事は、それを手にする物に絶大な力を約束する―これは誰の目から見ても明らかだった。
そして、超大国といい、最終戦争論といい、次元破壊弾といい、この時代の人々は、そう言った力にはうんざりしていた。
人類総会に管理させるか?
いやいや、それではかつての五大国以上の悪夢になってしまう!

そこで、国際政治学者レイフェソ=ンギガを中心とした有識者達の提唱が受け入れられた。
公的な性格を付与された会社にその役目を負わせると言うアイデアである。

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