「お待たせしました。荒木と言います。どういったご用件でしょう？」
勇一の目の前にいたのは、ほぼ同じ年代の男だった。
「突然すみません。お仕事の最中に。下の名前は勇一さんですよね？」
「ええ…」
「良かった。また会うことが出来て」
「はい？また？あの〜どなたでしょうか？」
その男の発言に、勇一は首をかしげて、思いをめぐらせたのだが、思い出せない。…いや、待て、新手の悪徳商法の勧誘か？
勇一の、自分を見る目が少々怪しがっているのに気づいた男は、「あっ！すみません。名前も名乗らずに。私は、嶋野浩一といいます」
「嶋野？…えっまさか」
その「嶋野」とゆう名前に、勇一は、忘れていた、いや出来れば永遠に忘れていたかった、思いがはりめぐらせられてしまった。
「突然本当にすみません。あなたにとっては、私はあまり会いたくなかった存在かもしれませんけど…」
「すみません。…正直に言ってしまえば、そうかもしれません。お兄さんですよね？由美の」と、勇一は尋ねた。
「そうです。兄です。どうしても伝えたいことがあって伺いました。妹のことで…」
「そうですか…よく僕がここにいるとわかりましたね。」
「すみません。失礼を承知で探偵に探してもらいました。事情を話して…すみません、もし仕事が終わって、時間を作っていただけるなら、お話ししたいことがあるのですが…」
「わかりました。８時には、終わるので、向かいのファミレスで待っててください」
「本当にすみません。では、待っています」
その嶋野が立ち去ったあとに、放心状態の勇一に、明らかに途中から話しを聞いていたと思われる、パート女性の佐野と、クレーム処理を終えた正が後ろにいた。
「ふ〜ん。今夜8時に。」
「わあ!佐野さんに中村。いつからそこにいた？」
「なあ、勇一〜。由美って誰？昔の彼女？」
「あの人、昨日も荒木さんあてに来てたのよ。そうゆう理由か〜」
「ほとんど聞いてたな。いいから、２人とも仕事戻れよ」
少し怒りながら、２人を仕事に戻したが，２人の何か企んだ顔に勇一は気づいていなかった。

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