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天上伝歌

[411]  エヌ  2009-04-18投稿
「月が、ふたつある。……月は、ふたつもあっては、いけないんだ」

そう、誰が言った?地上にふたつ目の月が現れ、しばらく経つと言うのに……。


ふたつ目の月が、だんだん大きくなり。多分、だいぶ前から、ふたつ目の月は現れていただろうに、太陽が昇り、沈む間は、現れていた月には気付かないだろう。

いつの間にか、ふたつ目の月が現れた事にも。


「月がふたつある……」「月は、ふたつもあってはいけないんだ」


ああ、誰も気付かないと思っていたのに、気付いたのか。

陽子(ヨウシ)。陽子がそう言った。


太陽の子供。陽子。


お前は、なんで、天から地に産み落とされた、たかが、産み落とされた可哀相な太陽の子供なのに、どうして、気付いた?

月が、ふたつもあってはならない事を……。


陽子。


太陽の子供。


月がふたつ現れようとも、お前がいる限り、太陽は存在するだろう。

月が、この世界を支配したくとも、彼等はお前の存在無しには存在し得られない。


あわれ、月の一族よ。


天から、歌がきこえる。


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