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君と彼女5

[110]  さくら  2009-04-18投稿
『…ねぇねぇ。何かリクエストしてよ。』

僕の気持ちなんか知るよしも無しに、無邪気な声で話し掛けてくる彼女。

君と同じ声が、僕の隣で聞こえてくる。

あの、楽しくて…幸せだった頃の思い出が…蘇る…。

何とも言えない、妙な気分で頭がおかしくなりそうだった…。

今にも、目の前の彼女を抱きしめたくてしょうがなかった…。

衝動を抑えることで精一杯だった…。

……“君”じゃないのに…。

『俺…あまりピアノの曲とか知らないから…。』

『なぁーんだ。曲名聞いてきたから、少しは興味あるのかな?って、思ってたのに…。』

カウンターのイスをクルッと一回転させてから降り、今度は僕の回りを歩き始めた…。

ピアノ弾いてる時はすごく大人びているのに、こうした言動をみるとまだ15、6の少女にも見える…。

思い切って僕は質問をしてみた。

『…ところで年齢いくつなの?』

『もー!年齢聞く前にまずは名前でしょ?』

頬を膨らませながら、僕の肩に両手を置き、横から僕の顔を覗きこんでくる。

彼女の顔が目の前にある…。

僕の気持ちも知らないで、無邪気に近づいてくる彼女…。

『アタシ名前は来夢(ライム)。今年で16……高校には…行ってない…。』

そう言って、少し寂しそうにうつ向いた。

『やっぱりな…若いと思ったよ。俺と10も離れてる』

僕は、自分の左肩にある、彼女の白い手をどかした。

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