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時と空の唄13-7

[281]  花神ミライ  2009-04-21投稿

「……くそっ!」
力一杯に洞窟の壁を殴った。
あの時伸ばした手はシーラの手を取ることなく空気を掴んだ。
今はその手には無力感と後悔が残っている。
そして今、シーラの消えた扉は堅く閉じられ、開く気配すら見られない。
押しても引いても結果は同じ。
少々手荒な手段も用いたが鉄の扉はびくともしない。
彼らの行く手は今、たった一枚の、けれど酷く分厚い鉄の扉に阻まれているのだ。



その頃、黒い光に包まれ気を失っていたシーラは全く整えられていない祭壇の間の床の上で目を覚ました。「う…。」
ひんやりと冷たい床からまだ気だるい体を起こし、キョロキョロと辺りを見回す。
薄暗く、聞こえる音は天井から洩れ出る僅かな水滴が落ちる音。
少し広い空間の奥にはたった二段の階段があり、そこには見覚えのある三つの水溜まりがあった。
「ここは…」
「ほう、やはり知っていたか。」
シーラが振り向くとそこには、全ての始まりのあの人。

しかし

気配が―――なかった。

いつからそこにいたのか、カロウドの気配にシーラは気付けなかった。
「………。」
「どうした、シーラ。」
「みんなは…ランスたちは、どこ?」
記憶の片隅にある最後はランスォールがシーラに手を伸ばす映像。
あのあと彼らがどうなったのか、今どうしているのかシーラは知らない。
「まだ扉の前だろうな。
さて、神器を戴いてくるか。」
高らかに笑ったあと、カロウドはその場にシーラを残し去っていった。

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