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奈央と出会えたから。<349>

[490]  麻呂  2009-04-21投稿

突然、辺りに響き渡った悲鳴が沈黙を破った――





『ユ‥ユカ‥‥?!今日は家で寝ている筈じゃ‥‥。』



呟いたあたしが、ユカの目に留まるコトはなかった。



ユカは、その場に崩れ落ちた自分の彼氏の上体を起こし、抱き寄せた。



『聖人!!ひどい!!何よっっ!!

ヒロキが何をしたって言うのよ!!』



キッ―ー‐



ユカが聖人を睨みつける。



冷たい視線で、その場に崩れ落ちた森宮を、黙って見つめていた聖人は、



その視線を、今度はゆっくりとユカの方へ向けた。



『秋田谷。そいつはお前の思っている様なヤツじゃない。

目を覚ませ。

そいつは、とんでもねぇイカレ野郎だ。』



クールな視線で話す、その落ち着いた口調にストレートな言葉が、ユカを更に感情的にさせた。



『‥‥な‥何言ってるのよ!!

イカレ野郎は聖人じゃん?!

何よ‥‥聖人なんて人のコト言う資格ないじゃん?!

いつもいつもカッコ良くて、オイシイトコだけ持っていかないでよ!!

カッコつけないでよっっ!!

聖人のコトを好きだって女のコの気持ち、考えたコトある?!

聖人は知らないかもしれないケド、聖人のファンは、たくさんいるのよっっ!!
奈央と付き合う様になってから、陰で泣いてる女のコもたくさんいるのよっっ!!

何よ‥‥ヒロキのコト言えないじゃん。
だから聖人は、ヒロキのコト、とやかく言う資格なんてないのよ!!』



すっかり取り乱していたユカの言葉を、


聖人は何も言わずに黙って聞いていた。


『ユカ‥‥。ユカは、それでいいの?!今のままの関係でいいの?!森宮さんとのコト‥‥‥。』



思わずそう叫んでいた――



ユカの気持ちを――


全然分かっていなかったのは、あたし――





『もういいからほっといてよっっ!!

奈央、聖人と2人でどこかへ行ってよっっ!!

あたしとヒロキのコトは、もうほっといてよっっ!!

奈央にあたしの気持ちが分かる?!

分かるワケないじゃん?!

何よ‥‥悲劇のヒロインぶって、結局は1番欲しいモノ‥手に入れてるじゃん?!』





そんなあたしが――


えらそうなコト――


言えるワケないよね――

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