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奈央と出会えたから。<350>

[515]  麻呂  2009-04-22投稿

『ごめん‥‥。ごめんね‥‥ユカ‥‥。』



あたしは――



ユカを傷つけていた――



こんなにも深く――


深く、



傷つけていたんだ――



そう思ったら――



涙が溢れてきた――




『謝らなくていいゼ、奈央。』



そのトキ、



聖人があたしに向かって言った。



そして、



まだその場に座り込んだままの、森宮の側に寄り添っていたユカが怪訝そうに、こちらを見た。



『秋田谷。お前が森宮と付き合うのは勝手だが、俺達は本当にお前のコトを思って言ってるんだ。

それだけは覚えておいてくれ。

奈央、もう行くゼ。』



グイッッ――



聖人は、それだけ言うと、あたしの手を、少し強引に引いた。



聖人の大きな手に引かれ――



あたしは少し後ろを歩く――



その間、ずっと無言だった聖人は――



あたしの家の前に来るまで――



ずっと、


ずっと――



無言だった――





『‥‥森宮が言ったコトは気にするな。
オマエには―――』



聖人は、そこまで言いかけたところで後ろを振り返り、



あたしの顔を、じっと見つめた。



『―――いつでも俺が付いてるってコトを忘れんな。』



嬉しかった――



本当に嬉しかった――



あたしは大好きなヒトに、



こんなにも思ってもらえて幸せモノだって思った――



なのに、



ユカのコトが心配だったあたしは、



その日から、



心が晴れずにずっとモヤモヤしている気持ちのまま、



毎日を過ごすコトになるなんて、



このトキは、全然思ってもいなかったんだ――

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