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セピアカラー(44)

[568]  優風  2009-04-23投稿
・「元気出せよ」

そう言って僕のグラスに剛はビールをついだ。あれから電話を終え、僕は剛の指定した居酒屋に来ていた。ここには剛の友達も働いている事からよく利用して今では常連客になってるらしい。剛がついでくれたビールを一気に飲み干し、

「恋愛ってやっぱり難しいなぁ」

と、僕が言うと、

「それ言うの何回目だよ。もう聞き飽きたよ、そのセリフ」

と、突っ込んできた。それからまた僕のグラスにビールをついだ。この“恋愛ってやっぱり難しいなぁ”というフレーズを剛に会う前から電話でバカの一つ覚えのように口にしていた。

「そんなにへこむって事はその会社の先輩から紹介されて付き合った彼女と別れて後悔してるって事だろ?」
「正直、後悔してないって言ったら嘘になるかな。でも、絶対とは言い切れないけど舞より美香を選んで間違いはないと思う」
「なんで、そう言い切れるんだ?まだ、付き合って間もないのに。お前じゃないからそのお前の心情は分からないけど」

枝豆を口にしながら剛は言った。

「言葉ではうまく表現出来ないけど美香といるとなんだか居心地が良くて楽なんだ。それから、趣味とかお互い共通する部分が多いし一緒の部分で笑いあえるっていうか。それと心のどこかで杭みたいに引っ掛かっていたせいもあって余計にそう思うんだろうな」
「フィーリングは絶対大切だな。まぁ、身体の相性もあるだろうけどさ。結婚は恋愛の延長っていう人もいるけどまた恋愛と結婚は別なんだよな。恋愛してさ、この人と一緒に人生を過ごしたいって相手に思わせる事で初めて結婚は恋愛の延長って言葉が成り立つんだよ。もちろん、相手だけじゃなくて自分もそう思わなきゃいけないんだけどさ。今の若い人達って彼氏、彼女がいても普通にセフレがいたりするじゃん。若いうちに遊ばないとって。毎日、和食ばかりだと飽きるから中華も味わいたいみたいな。確かにそれも一理あるんだよな。性欲も三大欲の一つで本能だし、また隣の芝生は青く見えるってことわざもあるしさ。でも、時と場合によってだけど誰かを好きになるのは別に悪い事じゃなく素敵な事だと思うよ。勝手に好きになって想うのは個人の自由だし。まっ度を過ぎたらダメだろうけど」

そこまで話してから剛は僕がついだビールを一気に飲んで、“トイレに行ってくる”と言ってトイレへと足を運んだ。

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