子供のセカイ。9
しかしそんなものより、覇王の押しの方が圧倒的に強かった。
『いいかい、舞子。君のお姉さんは危険人物だ。“子供のセカイ”を脅かし、君から想像の自由を奪う。そんな人を“子供のセカイ”へ招き入れるわけにはいかない。』
舞子は黙ってしまった。美香はあまり期待してはいなかったが、やはり舞子は覇王の方に傾いたらしい。
『……わかったわ、ハオウ。じゃあね、お姉ちゃん。頑張ってなんとかお家に帰ってね!』
舞子の声が楽しそうなソレにすりかわる。やはり小学三年生の舞子に、事の重大さがわかるほどの常識が備わっているはずがなかったのだ。
やがて美香は暗闇の中一人残された。声が完全に消え去ったという事実が、ひしひしと胸の内に広がっていった。
「舞子……。」
恐らく二人はこれから、覇王の提案通りに“子供のセカイ”への扉を閉じにいくのだろう。そして美香は、当然帰ることもできず、永久にこの闇の中をさ迷う事になる……。
(今ならまだ現実世界へ通じる扉をくぐれるかしら。)
ぼんやりとそんな事を考えた。だが当たり前のように、美香の体はそこに留まり、頭の隅ではなんとか舞子を取り戻す方法を必死で考えている。
なんだか、笑えた。
こんなに舞子のために尽くしているのに、ちっとも顧みられない自分が。
(でも、やらなきゃいけない。いくら舞子が望まなくたって、あの子は私の、たった一人の妹なんだから……。)
決意を新たに顔を上げた時、暗闇の中を誰かが走ってくる足音が聞こえた――。
* * *
「っわ、と!」
「痛っ!」
耕太は何者かにつまづいて盛大に転んだ。闇の中は真っ暗で、声が聞き慣れたものでなかったらきっと縮み上がっていたことだろう。
「美香、か?」
「その声……耕太!?」
二人は手探りで相手の肩をつかみ合って向かい合った。
「どうして耕太がここにいるの?」
「どうしてって、石段を登りきったら変な黒い入り口があったから、美香がいるかもしれないと思って……。」
悪い、さっきの奴倒せなかった。悔しそうに小声で付け足した耕太に、何で来ちゃったの!と怒りかけていた美香は何も言えなくなってしまった。
「舞子は?」
「……もう“子供のセカイ”に入ったわ。」
「じゃあオレ達も入らなきゃな。」
耕太が辺りをキョロキョロするのが気配でわかった。
『いいかい、舞子。君のお姉さんは危険人物だ。“子供のセカイ”を脅かし、君から想像の自由を奪う。そんな人を“子供のセカイ”へ招き入れるわけにはいかない。』
舞子は黙ってしまった。美香はあまり期待してはいなかったが、やはり舞子は覇王の方に傾いたらしい。
『……わかったわ、ハオウ。じゃあね、お姉ちゃん。頑張ってなんとかお家に帰ってね!』
舞子の声が楽しそうなソレにすりかわる。やはり小学三年生の舞子に、事の重大さがわかるほどの常識が備わっているはずがなかったのだ。
やがて美香は暗闇の中一人残された。声が完全に消え去ったという事実が、ひしひしと胸の内に広がっていった。
「舞子……。」
恐らく二人はこれから、覇王の提案通りに“子供のセカイ”への扉を閉じにいくのだろう。そして美香は、当然帰ることもできず、永久にこの闇の中をさ迷う事になる……。
(今ならまだ現実世界へ通じる扉をくぐれるかしら。)
ぼんやりとそんな事を考えた。だが当たり前のように、美香の体はそこに留まり、頭の隅ではなんとか舞子を取り戻す方法を必死で考えている。
なんだか、笑えた。
こんなに舞子のために尽くしているのに、ちっとも顧みられない自分が。
(でも、やらなきゃいけない。いくら舞子が望まなくたって、あの子は私の、たった一人の妹なんだから……。)
決意を新たに顔を上げた時、暗闇の中を誰かが走ってくる足音が聞こえた――。
* * *
「っわ、と!」
「痛っ!」
耕太は何者かにつまづいて盛大に転んだ。闇の中は真っ暗で、声が聞き慣れたものでなかったらきっと縮み上がっていたことだろう。
「美香、か?」
「その声……耕太!?」
二人は手探りで相手の肩をつかみ合って向かい合った。
「どうして耕太がここにいるの?」
「どうしてって、石段を登りきったら変な黒い入り口があったから、美香がいるかもしれないと思って……。」
悪い、さっきの奴倒せなかった。悔しそうに小声で付け足した耕太に、何で来ちゃったの!と怒りかけていた美香は何も言えなくなってしまった。
「舞子は?」
「……もう“子供のセカイ”に入ったわ。」
「じゃあオレ達も入らなきゃな。」
耕太が辺りをキョロキョロするのが気配でわかった。
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