どの位こうしていただろう
風邪を引いてしまっては意味が無い
『ホテルまで送る』と切り出した私の体を引き止める様に『一緒に寝て』と強く抱き締める
そうしたい気持ちはある
私も貴方といたい
でも出来ない
酔っているからじゃない
理性を守る為

考えてみれば初めて貴方と一線を越えてから体の関係はない
『大切にしたい』と言う貴方の言葉で知った
きっと貴方の本音
それだけじゃないんだよと言ってくれていると思ったし
私もそれが何だか良かった
いつまでもこんな感じが良かった
何となくそれを壊したくなくて
都合の良い女になりたくなくて
理性を守る事も貴方と続けていける手段の様な気がしたから

『それは出来ない』と答える私を寂しそうに見つめる
『何で』と聞く貴方に『何も持って来てないから』と笑った
寂しそうな表情が消えない
途端に理性は崩れ落ちそうになる
貴方をなだめる様に
『また来月、一緒に寝よう、約束』と貴方の頬に手を置いて言った
『我慢出来ないかも』と子供の様な貴方が可愛い
『我慢して』と大人の振りをして答える
『分かった、好きだから嫌がる事はしない』と言った
嫌な訳がない
本当は私もそうしたいのだから
今日は私も我慢しようと決めただけ

『じゃあ俺が駅まで送るよ』と言うから『それじゃあ意味がないよ』と断った
『ホテルまで送られたら帰す自信がないから』と貴方が言うから頷いた

貴方が一人でも寂しくない様に私のヘアコロンの香りをスーツに染み込ませた
貴方が嬉しそうに微笑む
『今日はありがとう』と言ってくれた
沢山『ごめんね』は聞いたけどその『ありがとう』がやっぱりいい
その言葉でやっと貴方にした事が意味を成した気がした

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