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咎 8 上

[467]  アオ  2009-04-26投稿
15階へ向かう昇降機の中で、彼は13、14階での出来事を反芻していた。
13階、彼は人審士に勝利したがかなりの深手を負った。右腕と左足が吹き飛び立つことすらままならない。それでも彼は這いずりながら進んでいった。14階へ向かう昇降機まで辿り着き、遂に昇降機の中で瀕死の状態となっていた。体内の冷却機が異常をきたし身体がどんどん加熱していく。それに伴い意識も朦朧としていった。
14階に着いたが体が言うことをきかず昇降機から出ることができない。彼の意に反し自動で体がスリープモードへと移行し数時間ほど昇降機の中にいた。意識が戻ったときには負傷は全快し戦闘前と何一つ変わらない姿になっていた。身体の挙動に不備が無いかを確認し昇降機を出て行った。

約100年。彼が14階を攻略するまでに要した時間だ。部屋は恐ろしく広く奥の方の壁を視認する事が出来なくなっていた。序盤はそれでも毎日敵を倒すことが出来たが、終盤には3ヶ月近く敵と遭遇しないこともあった。だが彼は決して諦めず今ここにいる。最後の臣羅層。最後の人審士。おそらく次で最後の戦いとなるだろう。
昇降機が15階に到着し扉が開く。そこは今まで見てきた部屋のどれとも異なっていた。部屋の中央に噴水があり、天井は満天の星空に部屋中にサクラの花びらの舞う幻想的な風景だ。
「この景色を知っているか。」
噴水の向こう側から不意に声がしたかと思うと人審士が姿を現した。
「いや、知らないな。」
風景どころか彼は「噴水」「サクラ」などといった単語すらしらなかった。
「これは俺たちの故郷を再現したホログラムだ。」
人審士の言葉に対して空を見上げながら彼はこう返した
「故郷…。私はこの様なところで作られたのか。」
噴水の水をかきながら人審士が言った。「違うな。それよりもっと前の故郷。まぁお前には理解出来ないだろうし理解する必要もないさ。」「……」
真意の分からない言葉に彼はどう答えて良いか分からなかった。

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