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裏切り〈4〉

[815]  夏姫  2009-04-26投稿
「…ダメだ、いないよ〜」

彼を探すことはや三十分。

いっこうに見つかる気配は無かった。

「そこらへんに落ちていないかな〜」

「楓ったら。物じゃないんだから…、あら」

楓の台詞に苦笑いしながら探していた時だった。

「…いた」

そう、楓の言った通り、落ちていたのだった。

「コイツ、何やってんの?」

楓の疑問も最もだった。

なにしろ、花壇の横にねっころがっていたからだ。

「人が必死に探してたっけいうのに…!!…ちょっと、アンタ!起きなさいよ!」

「…んー。何?」

寝ぼけ眼の少年に、楓の怒りは爆発した。

「ちょっとアンタ!先輩にむかってそんな態度とるなんて、いい度胸じゃない!」

「!ハイ、すいません!」

さすがの彼もこれには驚いたらしい。

先程までは半分しか開いていなかった目が、今は完全に見開いている。

「あ…、さっきの」

「アンタに聞きたいことがあんのよ」

高校生時代、楓はかなりヤンチャだったと前に聞いたことはあったけど…、と百合は内心びっくりしていた。

(まさか、ここまで凄かったなんて…)

そんな百合の驚きに楓は気づくことなく、どんどん少年に詰め寄った。

「アンタさぁ、こっちの先輩のこと、見覚えない?」

楓は百合を指差した。

だが、少年は動じることなく百合をまじまじと見つめた。

「……。いや、見覚えはありませんけれど…」

少年は困惑しながらいった。

「嘘ついてんじゃ…」

「ねっ、ねぇ!」

このままではらちが明かないと思った百合は、慌てて会話に入った。

「…あなたの名前は?」

少年は百合を見て、口をゆっくりと動かす。

「…玲。坂田玲って言います」

百合と楓は、思わず顔を見合わせた。

「本当に…?」

「本当です」

玲は何度も何度も頷く。

「玲…。私のこと、覚えてない?百合だよ」

「百合…」

玲はじっと考え込んでいる。

「…ごめんなさい、本当にわかりません」

「そう…」

「でも!」

玲は、そこで一度言葉を切った。

「でも、…凄く懐かしい気がします」

「!!」

百合はその言葉に驚いた。

(やっぱり、今私の目の前にいる人は…玲なんだ)

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