○●純+粋な恋拾遺●5
1-5 こころ憂し
「どうして,
お母さんの葬式をほったらかしにできるの?!」
「ほったらかしなんて,
してない。」
男の子の目は次第に潤んできている。
「お母さんは言った。こんなちっぽけな生き物の命の重さが,ちゃんと理解出来る優しい子になって欲しい‥って。」
男の子は働かせていた手を止めた。
「だから僕は,
お母さんの望みを叶えてあげるんだ。
優しい子に,ならなきゃいけないんだ。」
― そうか‥。
と,粋乃は男の子の潤んだ目を見た。
― それが,あの人の望み なんだ‥。
何かを決意した様に空を見上げた。
優しい子。
― 春子おばさんの望ん
だ様な子になろう。
粋乃は今日,心の中で優しさを誓った。
住職のお経はまだ続いている。
「じゃあ,僕行くね。」
男の子は,
駆け足で家の中へ入って行った。
それから16年後,
幼かった2人の子供は,
優しさを保ったまま成人し,この桜並木で,
再び出会うこととなる。
●●こころ憂し
終わり●●
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