貴方が私の手を掴んだ
右手に持った指輪を私の左手の薬指にそっとはめた

貴方のその時の笑顔をきっと忘れない
優しくて暖かくて嬉しそうな笑顔
だから私もそれに答えて笑った
『ありがとう』と言って右手の人差し指で付けられた指輪をなぞった

左手の薬指
これが『永遠の誓い』を意味していたら
貴方がどんな想いでこの指を選んだのか

きっと何の意味もない
この行為さえも
だけど替えなかった
右手に付け替え様とした手を止めた

私達に永遠の誓いなどない
二度とこの瞬間は来ない
未来なんて無い『今だけのプロポーズ』
それが悲しくて本当は泣きそうだった
ごまかす為に何度も左手をかざして笑顔を作った
キラキラと綺麗で私には勿体ない位で
涙が零れない様に何度も瞬きをした

幸せになりたいとこれ程に思った事はない
貴方といつまでもこうして手を繋いで隣で笑って
これからも沢山の思い出を作って行きたいと
叶わないと知っている
だからこそ強くなるこの想い

『いつも付けていて』
貴方が望むならそうしたい
『職場では付けれないけど毎日付けるよ』
貴方に嘘を付いた

家に帰った時
友達に会う時
この指輪は外すだろう
二人でいる時は恋人でも
離れてしまえば恋人ではない
周りに聞かれても胸を張っていられない
貴方の存在を隠す事しか出来ない
付けるのは貴方といる時
一人でいる時だけ
こういうのも私を寂しくさせる
貴方といると想われる嬉しさを知る事が出来るのに
その後に必ず孤独感に襲われる

だから今のこの幸せを噛み締めておきたくて
目を閉じて貴方の肩に顔を埋めた

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