触れること?
−−−…ぎ………………な………ぎ………−−−
声がする…。その声を頼りに、俺の意識はそれに沿っていく。
「凪!大丈夫!?」
零だ。零は、俺の手を華奢な手でギュウッとではなく、キュッという感じで握った。真冬のせいか、零の手は氷のように冷たい。
「…凪、覚えてる?車にはねられて…!」
「ああ…。てか、覚えたくねぇがな…。」
ポロリとこぼすように言った。
零は、目で見てもわかるように胸を撫で下ろした。
「…でも、よかったね!近くにお医者さんがいたから、応急処置が出来たんだよ!」
「へー。」
その直後、病室のドアが開かれた。
「あ!…木佐先生!」
(木佐…!?)
もしやと思い、じっと見る。黒い髪に、ホッソリとした体型…。やっぱり、俺の考えた通りだった…。
木佐 辰也(きさ たつや)前回言った、零と仲良く話してた…俺と仲ワリィ奴。
つか、言い忘れてたが、俺とそいつは、医学大におった。(俺は、馬鹿だからすぐに退学されたけど…。)
「笠原さん。私が、あなたの主治医の木佐 辰也です。」
し…主治医!?
最悪だ!よりによってコイツが…!?
「凪、私飲み物買ってきたげる!待ってて!」
「…おい!」
待てって…動けねぇし…。
そんで、今残ってんのは…仲の悪い同僚のみ…。
「…さて…。久しぶりだな…笠原…テメーが退学したっきりだから、もう一年近くか?」
「…しるか!つか、テメーまだ卒業してねぇだろ!なんで主治医になんだよ!?」
木佐は、明らかに何か企んでいる笑顔をして答えた。
「ざーんねーん!実習。」
実習!?しまった!確かに実習があった!
「『この患者さんの主治医をやらせて下さい。自分のやれる限りがんばりたいんです。お願いします。』って…頭下げたら院長、関心っつって、やらせてくれたんだよ…。いやー、嬉しいね。」
「卑劣な優等生が…。」
怒りをこめて、俺はこいつに投げかける。
木佐は、俺の服の肩辺りを掴み、ベットから叩き落とす。
「いって…!」
包帯の下がジンジンする。木佐は、胴体で俺の頭を隠すように移動して、髪を掴み 顔を上げさせる。
「…立場をわきまえろ…馬鹿が…。」
くそったれ!!
医者の立場を使って俺をいたぶりやがる!
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