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○●純+粋な恋拾遺●6

[399]  沖田 穂波  2009-05-06投稿

2 傍ら痛き若人

淡矢 純。
齢23にして死を悟っていた。と言うのは,
純の体は亡き母親と同じ重い病に蝕まれていたのだ。

その事は,
吐血して初めて純自身も気が付いた。
病の進行は早く,もはや死は逃れられない。
無傷なまま死ぬ事を望んだ純は,
あえて治療をせず,
いつ訪れるやもしれぬ死をただ待ち続けるのだった。


純は,1人で外へ出た。
病に蝕まれてから,
1人で出歩いたのは何日ぶりだろう。
今日はよほど体調が良いらしい。

田の稲は青々と波打ち,
病で痩せた体を初夏の生暖かい風が包みこむ。

純は,足早に近所の寺へと向かった。

途中,暑さに目眩をおぼえたが,そんな事気にもとめなかった。
それよりも,
何か重大な用件が純を動かしていた。

「‥純?純なのか!?」

寺の境内に入るとすぐに住職の声が後方から聞こえた。

「住職,お久しぶりです」

純は丁寧に頭を下げた。
住職とは純が三歳の頃からの付き合いで,
母親の経もこの住職に詠んでもらった。
ここを訪ねたのは,約二年ぶりである。

「本当に,
久しぶりだなぁ。元気でやっているか?」

「‥ぇ‥っと。」

返答に困った。
自分は今元気とは言えない。しかし,
住職に心配をかける訳にはいかず,

「はい,
元気一杯ですよ!!」

嘘をついてしまった。
そんな自分に純は腹が立った。
しかし,
住職は純の今の境遇を見抜いていたらしい。

「馬鹿者‥
無理せんで良い。お前,
めっきり痩せたじゃないか。23の健康な若者ならそんなに顔色も悪くないはずだろう。
病だと言うことは誰が見たって一目でわかる。」

「馬鹿者‥ですか。」

純は,
俯いて小さく微笑んだ。

○○続く○○

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