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ギャラクシーラリー67

[403]  フェイ  2009-05-07投稿
シンジは、美穂にそっと近付き、遼一に聞こえないくらいの声で言った。

「彼、いつもあんな風なの?」ぼんやり考え事をしている遼一の方を見ている。

「ううん。違う。いつもは、何と言うか…もっとクリア。澱んでない。媚びてない。威張ってない。信念を持って生きているって言うか…。上手く言えないんだけど、こんなにぼんやりしている遼一さんは初めてみた…」

遼一の新しい一面をみて、美穂は凄く嬉しかった。彼に一歩近付けた気がする。
「あっ、それから…遼一さんは、ワタシの彼氏ではないよ…」美穂は自分で言って、少し寂しくなった。でも、頑張るわ!

「えっ?そうなんだ。てっきりオレは…。ゴメン」シンジは、驚いて見せた。とっくに分かっていたが、遼一に近付く為には、まず美穂を味方に付けるべきだと考え、知らない振りをしていたのだ。

「とにかく、兄貴達を紹介しますよ。行きましょうか」シンジは遼一に声をかけた。

遼一は人だかりの方を見て、まだ考え事をしていたが、やがて歩き出した。ギャラリーや参加者が、更に増えている。普段は寂しいドライブインが、お祭り騒ぎである。大声で騒ぐ若者。走り屋の車の排気音。暴走族の怒鳴り声。大勢の人間を見ながら、遼一が独り言を言っていた。
「…エントロピーが増大してエネルギーは拡散する…俺の欲しいのは、エネルギー、レースで優勝するほどの強い力…」

ブツブツと呟いている遼一を見て美穂は思った。あぁ、邪魔しちゃいけない…。遼一さんと二人きりの時間が終わってしまったけど、彼は今、きっと未来を想像している。その実現の為に思考がフル回転しているんだ。

シンジも黙って、遼一の独り言を聞きながら歩いていた。散逸構造理論か…。全く、この男は何者だ?この男となら、自分と対等に話を出来るかも知れない…。
シンジは、今までの人生で、自分と同レベルで話を出来る人間に会った事が無かった。ならば、遼一も自分と同じように孤独だったのだろうか?よく生きてこられたものだ。寂しかっただろうに。オレには、家族と明菜がいたが、彼には誰がいたのだろう?

「シンジ君…。君、自殺しようとした事あるかい?」遼一が突然聞いた。

この男は…。人の心が読めるのか?

「はい…。あります。小学四年の時でした」

「今まで寂しかっただろう?四年生?天才だ」遼一が優しく言った。
シンジは涙が出そうになった。

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