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奈央と出会えたから。<360>

[566]  麻呂  2009-05-13投稿

『はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥‥。』



『これ、口に当てて――』



聖人が机の上にあった、適当な大きさのビニール袋を、あたしの口に当ててくれた。



これは、過呼吸の発作を起こしたトキの応急処置だった。



『奈央は時々、過呼吸の発作を起こすんだ!!

テメェらが奈央に辛いコト、語らせたからだ!!

奈央は俺が保健室に連れて行く。

続きは、それからでもいいだろ?!

処分なら、俺が何だって受けてやるからよッ!!』



聖人に優しく背中をさすってもらったら、次第にあたしの呼吸も落ち着いてきた。



『し、し、し、渋川君!!

一体、木下はどうしたのかね?!

き、き、き、救急車は呼ばなくていいのかね?!』



校長は取り乱していた。



その姿があまりにもこっけいで、



妙に脳裏に焼き付いている。



それから――



呼吸が落ち着いたあたしは、



聖人に優しくお姫様抱っこをされた。



これで2度目のお姫様抱っこ――





『行くゼ!!』



バンッッ―ー‐



勢い良く職員室を出た――



大人達は、皆、聖人の行動の早さに、あっけにとられて立ち尽くしていただけ――





聖人。



いい匂いがする。



聖人に抱っこされながら――



あたしは静かに目を閉じた―――

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