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わたし

[372]  エヌ  2009-05-17投稿
わたし。

わたしだと思っていた。


いつか、あの人が選ぶ女。あの人が、留まる女。あの人が帰る女。

帰る場所。


もし、それが私だったなら、私は、出来る限りのことを、私が出来る全てを尽くし、あの人の帰る場所をつくる。

美味しい物を作って、ゆっくり出来る空間を作って、あの人が愛するように、私の手を「きれいだ」と言ってくれたように、それがつづくように、私の全ての時間をかけて、あの人を待とう。


あの人が、帰る場所が、わたしだったならば。


なんで、

なんで、


わたしじゃないの?


どうして、どうして、わたしじゃないの?


ああ……、

本当はわかっている。本当はわかっている。わかっているんだよ。

私じゃなかった訳も、わかっているよ。


失ってから気付くんだね。

いくらでも伝えられる時に伝えずにいた私は、仕方ないね。失った物を、いつまでも引きずって、おしまいだ。


ああ、伝えられないから、届かないから、思う存分に叫べるのか……

愛していた

と。



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