携帯小説!(PC版)

pain?

[275]  mia  2009-05-20投稿
「なんだよ、ダニエル」

フェンリは男に向かって言った。男−−ダニエルは、冷めた表情で、目線だけこちらに向けた。

「アリスの事は諦めろ。リヒネを襲うなんて無謀過ぎる」

「見捨てるっていうのか」

「そうだ。アリスに限かったことじゃない。勝算の少ない賭をしてまで仲間をいたわる余裕は俺達にはない」

「アリスを見捨てるなんてできないよ!」

フェンリは憤って机を叩いた。

「だが」

ダニエルは続けた。

「我々は仲間を縛らない。おまえ達が無謀にも行くというなら止めない。組織としては干渉せんがな」

「………」

フェンリは下を向き、しばらく考えてから、きっと私を見た。

「行こう、アリス」

フェンリはそう言って、私の答えを待たずに部屋を後にした。私は彼の背中を追って、部屋を出た。

「フェンリ。どうするんだ」

私は尋ねた。

「決まってる。リヒネに行く」

「危険だ」

私は少し強く言った。

「わかってる。……でも…、でも、アリスは俺にとって、家族も同然なんだ。大事なんだよ。放っておけない。わかってるよ、危険なのは。アッシェンだって、ダニエルと同じ意見なんだろ。いいよ、俺は。ばかだっていわれたって、一人でも行く」

「誰が一人で行かせるっていったよ」

私はフェンリの肩に手を置いた。

「一人で行かせられる訳無いだろ」

フェンリは、目を見開いて私を見た。

「…へへっ」

はにかんだような表情を見せるのが照れ臭かったのか、フェンリは私に背を向けて、にっとわらって、

「よし、いくか!」

と、わたしの腕を取って、駆け出した。

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