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ロストクロニクル7―14

[398]  五十嵐時  2009-05-23投稿
「『クレイラ』って?」
タクトはダイヤの表情に合わせるような、神妙な面持ちで問いかけた。
「この町の名前。この町も少し前まではすごく活気があって・・・」
タクトはダイヤの話とダイヤに見せられたあの幻想が重なった。
「だけど、いつの頃からかこの鏡の宮殿に化け物が住み着くようになったの」
「やっぱり・・・」
フラットの独り言が聞こえた。
「あたしたちクレイラの住人は、その日から毎日ひとりずつ化け物に襲われていったの!」
ダイヤは突然思い出したように声を荒げた。
「でもよ、お前みたいな力を持ってる奴らがたくさんいたんだろ?だったら、その化け物を追っ払えば良かったじゃねぇか」
「そんなことはとっくにしてた。この村にいる特に強い鏡の力を持つ15人が鏡の宮殿に乗り込んだ。その中にはあたしもいたの・・・でも、あれはただの化け物じゃなかった」
今度は怯えるように声が震えていた。
「それが『耐性を持つ者』だったんですね?」
「『耐性を持つ者』?」
タクトがさっとフラットの方を見た。
「はい。僕が王立図書館でこの町を調べている時に、なんとなく目に止まったんです。その時は急いでたんで、しっかり見ませんでしたが」
「なるほど。外ではそんな言われ方をしてるんだ。確かにあの化け物は耐性を持ってた。鏡の力が全く通用しなかったの・・・まるで、誰かに造られたみたいに・・・」
造られた、タクトはその言葉に反応した。そんな化け物を造れる国なんてひとつしかない。
「あたしは命かながら逃げ出したけど、あたしたち15人の敗北を知って、町の住人の殆んどが別の村や町に逃げ出した。15人以外の人たちの力は無いに等しかったから・・・」
そこまで言うとダイヤは俯いてしまった。
「長々と聞かせてもらったが、で、願いってなんだ?なんでも聞いてやる」
ウェドは巨大なハンマーを取り出した。
ダイヤは小さく微笑むと大きな深呼吸をした。
「一緒に、化け物を、退治してほしいの」
ダイヤの決意は表情からよく伝わってきた。
「よし!じゃあ、その化け物はどこにいるんだい?案内してほしい」
タクトも決意を新たにした。
その時
宮殿中の鏡が全てわれてしまいそうなほどの大きな重低音の鳴き声が宮殿中に響き渡った。

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