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クレセント・ローズ 2

[433]  加藤聖子  2009-05-24投稿
教室は紅蓮の炎に焼かれていた。
鞭が掠めた頬の傷を拭った花音は、不敵な笑みを浮かべた。
残酷な笑みが、彼を戒めから解き放つ。
「ふざけるなよ」
キッと睨み付けた途端、花音を中心に床の残骸が宙に浮き上がる。
俯く花音から沸き立つ魔力が、花音を無重力にしているのだ。美しい青銀の髪が舞い上がる。
「ふざけるなよ、最下級の分際で。お前が彼女に触れられるなど許さないッ!」
顔を上げたその刹那、膨大な魔力が開放される。
地這いの業火が、青色に染まる。
主導権は完全に花音が握っていた。
業火は見る間に逆流して、敵にめがけていく。
「ば、馬鹿な!」
彼は迫り来る業火になす術をもたない。
「花音ッ」
戒音の声に、正気を取り戻した花音が、慌てて炎の流れを消し去る。
油断した敵に、飛び出した戒音の刃が襲い来る。

「貴方は心配そうね?ディア」
「ごめんなさい。好きな人が出来てしまったの」
「ディアッ!」

襲い来る少女に、ディアは微笑んで両腕を広げた。
「おかえり、ローザ」
その瞬間、花音が叫んだ。
後一歩だった。
剣はディアの喉元寸前で、ピタリと止まった。
「愛しているよ」
ディアの指先が戒音の顎を捕らえ、唇が塞がれる。
怒り狂ったのは花音だ。
獅子の鋭い爪に背中を貫かれた無惨な身体を晒す戒音の手から、時雨刀が滑り落ちた。
「これは私の物だ」
戒音を抱き抱えたディアを前に、花音は舌打ちする。
無理矢理力を開放した余波で、花音は膝を着いた。
「彼女はお前のように汚れた異端などに似つかわしくない」
戒音を抱えたまま飛び去ったディアを、必死に追い掛けようとする花音の前に獅子が立ちはだかる。
花音は舌打ちして剣を構えた。

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