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覇王の城 1

[398]  戒音  2009-05-24投稿
魔王の生贄として、村の若い娘が荷台に乗せられて、砂漠の中を進むんでいく。
今までも、何度も見送りした御者は、泣き叫ぶ少女達に、これから苛酷な人生が待っているだろう。
御者は馬車を止めた。
「着いたぞ」
ローブを纏った少女は一番先にに大地を踏み出す。
魔王さえ亡くなれば悲劇は止まる。
音も無く、扉が開いていく。
豪奢な部屋には、豪奢だ。
贅な限りを費やした城は、豪華絢爛といった風だけれど、どこか冷たい。
ふと、視線を感じて階段に目を向けた時、一瞬心臓が止まるかと思った。
黒衣を纏った、引き締まった身体。
その瞳は闇より深い色。
闇色の視線が合った瞬間、魔王は唇の端で笑みを作る。
「おいで」
魔王が手招きすると、自分の意思にに反して、階段を上がってゆく。
他の周囲は事態を把握しなかった。
階段を上りきったリズを、魔王は黒衣で覆い隠した。

懐かしかった。
百合の香り。
何故、私は戸惑っているのか。

目を覚ますと、豪華な天蓋の中にいた。
「やはり君だったんだ」 魔王に立ち向かおうとさぐったが。
「武器なら回収させてもらった」
リズは悔しげに唇を噛むと、膝を抱えて顔を埋めた。

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