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ときのこ 1

[489]  アオ  2009-05-30投稿
朝起きるといつもと変わらない自分の部屋。いつもと変わらない匂い。いつもと同じ様に朝食の支度をして、食べようとしているときにいつもとは違う事が起きた。
「おはよう。ヒナツ。」
脳内に直接信号が流れ込んでくる。電脳通信だ。当たり前のように通信してきたが彼女は送り主を知らなかった。彼女はストーカーか何かと思い返答せずに相手の居場所を突き止めようと逆探知を開始した。一般人には逆探知など出来はしないが彼女は電脳関係の仕事をしていたためそんな事は文字通り朝飯前であった。三十秒ほどたった。本来なら彼女が相手の情報を得るためには十分な時間がたったのだが彼女はまだ見つけられないでいた。まるで実体が無いかのように情報がつかめない。相手も電脳に関してかなりのスキルを持っているようだ。
「探しでも無駄だよ。」
再度信号が送られてきた。相手の真意が分からない。
「なんなんだ。お前は。」
彼女がそう送るとすぐに返事が来た。
「驚かせてすまない。自己紹介がまだだったね。クロノだ。これからよろしく。」
「これからだと。話がしたいなら体も一緒に来い。このストーカー。」
「怒らないでよ。急に来たのは謝るからさ。僕はただ人間を研究したいだけなんだ。」
「何故私のところに。」
「警察には知られたくないんだ。調べた結果ヒナツなら僕の事をバラさないと思ったんだよ。大丈夫。何も悪さなんてしないからさ。僕に出来ることなら何でも協力するよ。」
彼女は無言でネットの接続を切った。
「接続を切っても無駄だよ。」
何故かまだ信号が送られてくる。この場合考えうることは一つしかない。
「お前、私の内部電脳に入り込んだな。自作の防衛システムで侵入を防いでいたのにそれをこんな短時間で破るとは。自分の技術を自慢するわけではないがお前はたいそう優秀なハッカーのようだな。」
「褒めてくれてありがとう。」
「優秀であれば何をしても良いというわけではないが、お前のように実力の伴った奴は嫌いではないな。しかし、お前はこのまま私の中にいて大丈夫なのか。本体の意識が無いままだと生命活動が停止する恐れがあるぞ。」
「その点は心配ないよ。さてさて認めてくれたみたいだし改めて宜しく。」
クロノはとてもうれしそうだ。それとは反対にヒナツはやれやれといった感じて小さく溜め息をして少し冷めたコーヒーを飲んだ。

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