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夜に咲く華〜華の編8〜

[315]  岬 登夜  2009-06-03投稿
「私、もうそんなに子供じゃないわよ」

「ええ、向こうの話など聞かせてもらって私もとても楽しかったです。なにぶん身体を壊して家に閉じこもってばかりの生活ですから華さんさえよければまたお誘いしたいのですが?」

圭吾の言葉に華の瞳は輝いた。紅は華の姿を見て華と圭吾が惹かれ合っているのがわかった。

「ねぇ、母様いいでしょう?こちらにはまだお友達がいないし。私だってあちこち見て歩きたいわ」

「そうねぇ。先程妙に聞いたらとても良い青年と言うし、太一さんにも太鼓判を押されてしまったし、あまり遅くならないうちに帰ってくるなら…ね」

紅の言葉に華ははしゃいだ。

「では圭吾さん。また、近いうちに誘いに来て下さいね」

圭吾は小さくうんと返事をし軽く紅に会釈して帰っていった。


「華、ちょっと」

圭吾が帰った後紅は華を部屋に呼んだ。

「あのね、華。圭吾さんとお付き合いするのは悪いとはいわないわ。だけど華も子供ではないのだから判ると思うけど余り深いお付き合いは禁止ね。あくまでもお友達としてのお付き合いよ。でないとお父様の耳に入ったら大変なのは華が判るでしょう?」

「深いもなにも昨日今日会って何がどうなるのよ。母様勘繰りすぎよ」

紅の脳裏にあの日の出来事がよみがえる。抵抗しても押さえ込まれただただ欲望のはけ口にされた初めての夜。あの傷が癒えるのにどれだけの時間を費やしたか。あんな思いを華にはさせてはいけない。

「母様?どうかした?」

強張った表情のまま固まった紅に華は声をかける。

「いえ…、とにかく何かあっては遅いのだから用心だけはしてね」

青い顔をして力無く部屋から出ていく紅を華は心配そうに見送った。


母様は何を心配しているのかしら。ただ一緒に出掛けたからといって。太一さんと出掛けたときにはあんなでなかったのに。やはり知らない人だからかしら。私にとってはどちらも会ったばかりだからわからないけど。


ただ、華のなかでも太一への気持ちと圭吾への気持ちに違いがあるのは気付いていた。だが、紅にそのことを悟られていることに華は気付いていなかった。

「本当に心配性なんだから」

そう言い華は今日の圭吾との出来事を思い浮かべ胸を高鳴らせた。

「今度はいつ会えるのかしら」

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