3パーセントの愛
「どこ行くの?途中まで送ってこうか?」
すぐ後ろのフィルム真っ黒で、維持費がかさんでそうな車を指さす。
警戒心をバリバリに張っているワタシに無意味な心配。
「いや、ほんとに大丈夫ですからっ;ありがとうございました。」
今度はあからさまにムッとした表情をつくり、強めに返答してみた。
男が立ち去るのを待ったけど、きっとこの男にとって待たれるのは拒否されてるということとにはならないのだろう。
ワタシは仕方なく体を起こして立ち去ろうとしたが、その瞬間男は人情味溢れる話しをしてきた。
なんでも、彼にはワタシと同い年の妹がいて年に1、2度だけ電話で話すらしい。
彼は地元の高校を中退して、上京したようだ。
それから、妹は自分の分身だとか地元では一番の美人だとか、足がしびれるまで話は続いた。
「これ見てよ。さっきメール来てさ〜。」
赤い振り袖姿の妹らしき女の子の写メを見せてほほえむ彼は、この女の子のお兄ちゃん以外の誰でもなかった。
最後に、ワタシのことをほんとに心配してるということも付け加えた。
「だいぶ顔色良くなったじゃん。俺ここにいるからなんかあったら電話して。」
渡されたのはキャバクラの名刺。
最初から薄々気づいてたけど、黒服の主張が強い彼になぜかカリスマ性?に似たものを感じた。
クラクションを一回鳴らして、真っ黒な車はあっという間に見えなくなった。
人臭さに浸りそうだったわたしは、無理やり我に返ってゆっくり歩き出した。
「雨、止んだんだ。」
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