惰情
渦を巻いている昔ながらの蚊取り線香を眺めているうちに、いつの間にか自分が眠っていてしまっていたことに彼は気が付いた。
渦は焼け落ちていた。灰塵と帰した「元」蚊取り線香は見るからに空しくて、そこにあるだけで部屋の温度が二、三度下がったのでないかと思われるほどだった。
彼はぼんやりを止め、立ち上がると、風に棚引いていたカーテンを脇に寄せた。日は暮れ始め、町は赤く染まろうとしていた。と、すぐ目の前を赤トンボが横切る。よくよく目を凝らすと、空にはたくさんのトンボが緩やかに空を描いていた。
二十年前と景色に変化はあったろうか。そんなことを考えた。
多分景色を眺める人の心にしても、差異は認められないだろうに。変わったとすれば、それは景色を見る人を、取り囲む環境なのだろう。 目を閉じた。
渦は焼け落ちていた。灰塵と帰した「元」蚊取り線香は見るからに空しくて、そこにあるだけで部屋の温度が二、三度下がったのでないかと思われるほどだった。
彼はぼんやりを止め、立ち上がると、風に棚引いていたカーテンを脇に寄せた。日は暮れ始め、町は赤く染まろうとしていた。と、すぐ目の前を赤トンボが横切る。よくよく目を凝らすと、空にはたくさんのトンボが緩やかに空を描いていた。
二十年前と景色に変化はあったろうか。そんなことを考えた。
多分景色を眺める人の心にしても、差異は認められないだろうに。変わったとすれば、それは景色を見る人を、取り囲む環境なのだろう。 目を閉じた。
感想
感想はありません。