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My Dust Memory 4

[422]  戒音  2009-06-10投稿
一閃と同時に、化け物の胴体が切り離される。
その先にいるのは、青銀の髪を振り乱した花音。
彼の表情は険しい。
背後で貪っていた化け物に剣を突き立て、頭上を仰ぎ見る。
恍惚の瞳で校舎の屋上から見下す真紅の双眸。
「戒音」
もう知っている彼女でなくなってしまった。
最も濃い始祖の血を口にした純血種がどうなるか、花音には痛い程わかっていた。
「また過ちを繰り返すのか、戒音」
戒音は覚えていない。
あの箱庭の楽園のような、刹那の日々を。
それでも・・・。
「クレイッ!」
花音が咆哮を上げるなり、闇の翼が大きく広げられた。
「またお前か」
戒音を抱き抱えて地上に舞い降りたクレイに、花音が剣を構えた。
「罪の鎖で力を抑制させられた闘神など、恐るに足りぬ」
戒音から離れたクレイの手に、大鎌が握られる。
鋼の音がしたのはその瞬間だった。
平然としたクレイの刃がしっかりと花音の剣先を受け止めていた。
「お前になど戒音を渡すものか。あれは私の妻だ」
「そうはさせるかッ!」


何故、この男は盾突くのだろう。


戒音の視線は花音に向けられていた。
必死に食らい付く姿は、見ていて滑稽だというのに。


何故、私を求める。
私は闇の支配者である、クレイの妻なのに。


その時だった、大鎌が花音の左腕をかすめ、その鮮血が戒音の顔に跳ねたのだ。
戒音は指で拭うと、その血を舌先で舐め取った。
「ッ!」
その血は身を焼くような凄まじい甘美な毒だった。
思わず喉を焼かれた戒音は、うずくまる。
戒音の異変に気付いたクレイは、とっさに後退した。
「戒音」
戒音を抱き寄せたクレイは、忌ま忌ましそうに花音を睨み、戒音と共に姿を消した。
街を徘徊する化け物達は、形を失って黒い血溜まりへと変じる。
舌打ちした花音は、月が雲に隠れるのと同時に姿を消した。

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