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真実 17

[321]  彰子  2009-06-11投稿
 美佐は内心驚いていた。何かと都合をつけては話をはぐらかされると思っていたが、女はちゃんと正面切って話そうとしている…、それだけに真剣さを感じた。 
 「すごく、淡々とした口調ですね。」と美佐は動揺を隠す様に言った。
 「そうですか?初めて電話でしか話してないからですかね…、で、日時をちゃんとしていただかないと、私が家にいない間、子供を見て貰わないといけないので、困るんですが。お宅みたいに自分達の都合で見てくれる親はいませんから。」 そうなのだ。子供の事や一切の事は心の問題まで、亜子が抜け目がないように、全神経を使い、いつも気配りをしている。何もかも都合で生きている美佐に個人的に腹が立つ。呑気な人…
 「この家じゃ嫌だし、私の叔父の家に来て下さい。車を停めるとこはないから、電車で来て貰える?私が駅まで迎えに行くから。」と、言ってきた。
 「わかりました。とにかく預かって貰えるか、聞いて見ます。明日、こちらからご連絡差し上げて宜しいですか?」
 美佐はたじろいだ。元々、会う気など無かったのに、話は進んでいく…。
 「こちらから明日の朝かけます。」
 と、美佐は言った。亜子は美佐の気持ちを見透かしていた。
 「ご主人の気持ちは貴女にとって、どうでもいいんですか?10年一緒にいればその分のご主人の考えや気持ちが私よりご存知のはずですよね、人の気持ちにルーズにならずに、ちゃんと話した方がいいですよ。」
 「あなたに関係ないでしょ!!」
 そう言って電話は一方的に切れた。亜子の予測の範囲だった。ただ単に気持ちもなく、誰かの妻って言うだけの人には、日々の家族の気持ちや心の動きに、敏感になる事を避け、都合で生きている場合が多い。
 亜子は自分の予測通りの返答しか無かった事が妙に面白くなった。

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