desteny??
今、立って居るこの場所が何処なのか、解らないまま、暫くその場に立ち尽くし、ゆらゆらと漂って居た。
家を出る時から履いていた高いヒールのサンダルと、此処に放置される前に着せられたであろう、見た事の無い、花柄のネグリジェとのアンバランスさも、気にならない程、頭は、真っ白な、ままだった。
とにかく、家に帰りたい―必死に、直ぐ前の抜け道を凄い速度で走り抜ける車の中から、タクシーを探した。
数十分位、経っただろうか―\r
一台のタクシーが、向こうから走って来るのが見えた。
空車のランプを確認し、必死で右手を挙げ、全身で、塞ぐ様にしてタクシーを止めた。
後部座席の扉が開いた―\r
私の格好を、上から下から、舐める様に見て、初老の運転手の男性は言った。
「・・・、どこまで?」
「此処、何処ですか?」
運転手の男性は、一瞬、戸惑い、首を傾げた。
「は?最寄りの駅までは、十分程下ったら着くんだけどねぇ・・・。」
まさか、この格好で、電車には乗れ無い―\r
直ぐに、冷静になり、我に返った―\r
「家まで帰りたくて・・・。此処は、東京じゃ無いんですか?」
「箱根だけど?東京じゃ無いよね・・・。」
運転手の男性は、不思議そうに、私の目を見詰めて言った。
「じゃあ、東京まで・・・。」
「最寄りの駅から、電車で帰ったら?お姉さん、若いし、お金もったいないんじゃ無い?」
「良いんです・・・。電車で帰るのが、しんどいんで。」
「そう?まぁ、おじさんは、儲かるから、嬉しいんだけどね・・・。」
そう言うと、運転手の男性は、ギアを引いた。
そこから、自宅までは、一言も会話を交す事は無かった。私が漂し出す、異様な空気を察知したのか、たまに、ルームミラーで、目は合うものの、お互い、見て見ぬ振りをしながら、数時間、気不味い空気が、車中に流れて居た。
数時間後、タクシーは自宅の前に着いた―\r
料金は、四万円近くになっていた。
勿論、財布には、そんな現金は入っていなかった。殆ど遣った事の無い、クレジットカードを震えた手で、運転手の男性に差し出した。
会計を済ませ、自宅の前に降り立った―\r
「香里、何処行ってたんだよ?」
その声を聞いた瞬間、全身が震えた―\r
聞き覚えの有る声だった。
「あっちゃん・・・。」
身体の底から、声を絞り出した。
「電話したのに、香里、出てくれ無かったからさ・・・。昨日は、ゴメンな・・・。彼女とは、ちゃんと話して来たよ。それより、お前さ・・・、何だよ、その格好?」
答える事が出来ずに、涙を抑えるのに、必死だった―\r
家を出る時から履いていた高いヒールのサンダルと、此処に放置される前に着せられたであろう、見た事の無い、花柄のネグリジェとのアンバランスさも、気にならない程、頭は、真っ白な、ままだった。
とにかく、家に帰りたい―必死に、直ぐ前の抜け道を凄い速度で走り抜ける車の中から、タクシーを探した。
数十分位、経っただろうか―\r
一台のタクシーが、向こうから走って来るのが見えた。
空車のランプを確認し、必死で右手を挙げ、全身で、塞ぐ様にしてタクシーを止めた。
後部座席の扉が開いた―\r
私の格好を、上から下から、舐める様に見て、初老の運転手の男性は言った。
「・・・、どこまで?」
「此処、何処ですか?」
運転手の男性は、一瞬、戸惑い、首を傾げた。
「は?最寄りの駅までは、十分程下ったら着くんだけどねぇ・・・。」
まさか、この格好で、電車には乗れ無い―\r
直ぐに、冷静になり、我に返った―\r
「家まで帰りたくて・・・。此処は、東京じゃ無いんですか?」
「箱根だけど?東京じゃ無いよね・・・。」
運転手の男性は、不思議そうに、私の目を見詰めて言った。
「じゃあ、東京まで・・・。」
「最寄りの駅から、電車で帰ったら?お姉さん、若いし、お金もったいないんじゃ無い?」
「良いんです・・・。電車で帰るのが、しんどいんで。」
「そう?まぁ、おじさんは、儲かるから、嬉しいんだけどね・・・。」
そう言うと、運転手の男性は、ギアを引いた。
そこから、自宅までは、一言も会話を交す事は無かった。私が漂し出す、異様な空気を察知したのか、たまに、ルームミラーで、目は合うものの、お互い、見て見ぬ振りをしながら、数時間、気不味い空気が、車中に流れて居た。
数時間後、タクシーは自宅の前に着いた―\r
料金は、四万円近くになっていた。
勿論、財布には、そんな現金は入っていなかった。殆ど遣った事の無い、クレジットカードを震えた手で、運転手の男性に差し出した。
会計を済ませ、自宅の前に降り立った―\r
「香里、何処行ってたんだよ?」
その声を聞いた瞬間、全身が震えた―\r
聞き覚えの有る声だった。
「あっちゃん・・・。」
身体の底から、声を絞り出した。
「電話したのに、香里、出てくれ無かったからさ・・・。昨日は、ゴメンな・・・。彼女とは、ちゃんと話して来たよ。それより、お前さ・・・、何だよ、その格好?」
答える事が出来ずに、涙を抑えるのに、必死だった―\r
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