異世界の旅人 第3話
「・・・・・・・・・・・あっ?」
セレンは目を覚ましてから、自分がおかれている状況が一瞬、理解できなかった。
さっきまでは確実に外にいたはずだが、いま、自分は見覚えのないベッドの上にいる。
「お、起きたか?」
セレンはその声がしたほうを向く。そこには20代前半ぐらいだろうか、そのくらいの男が椅子に腰をかけている。
「お前何してたんだ?なんか森の中で寝てたらしいが。なんだ?旅でもしてて行き倒れたのか?」
「えー・・・旅してたわけじゃないけど、夜、町外れの泉に友達と行ったら・・・」
(しまった!)
そこまで言ってセレンは自分の失言に気づく。
夜に泉に行くことは禁止されているのだ。なんでも、夜は足元が見えづらく、泉に落ちる危険性があるとか・・・
(あちゃー、ばれちゃったよ・・・)
だが、男の口から出た言葉は予想外のものだった。
「へー、町外れに泉なんかあったのかぁ」
「へっ?」
セレンは驚く、あれだけ街で話題になっていて、知らない人も珍しい。
「まっ、なんにせよ、気をつけろよ、早く家に帰らないと、ママが心配してるぞ。」
「えっ?、あ、あぁ」
セレンは自分には母親がいない、とは、あえて言わなかった。見ず知らずの人に気を使わせたくなかったのだ。
「んじゃ、気をつけて帰れよ」
男はドアまで見送ってくれた。そう言えばさっきからレミアスの姿が見えない。大方、先に目が覚めて、一人で帰ったんだろう。薄情なやつだ。
ドアの外に出て、セレンは見覚えのない景色に驚く。
「な、なぁ、孤児院はどっちの方向だ?」
男に聞こうとしたが、もうドアはしまっていた。
再び呼ぶのも、なんか恥ずかしいので、自分で探すことにしようとしたが、やっぱり面倒だ。
「・・・・誰かに聞くか」
適当に、セレンは通りかかった人に声をかけた。
「このまちに孤児院なんてあったかしら?」
「孤児院があるなんて、聞いたことないぜ」
だれに聞いても同じような答えがかえってきた。
セレンの頭に一種の予感がした。
質問を変えて聞いて見ることにした。
「ここは何という街ですか?」
「ここはアルバニの街じゃないの」
予感的中、セレンがいた街はハノイ。
アルバニの街なんて、聞いたこともない。
それならレミアスはどこにいったのか?
とりあえずハノイの街に帰ろうと思った。
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