子供のセカイ。24
林の中も野原と変わらず、さんさんと日の光が降り注いでいて美しかった。時折風にざわめく木の葉が、光を踊らせて草の生えた地面にまだら模様を織りなす。
もくもくと煙が立ち昇る方角に向かうと、一軒の小さな家が見えてきた。
レンガ造りの一階建てで、屋根には煙突が、丸い窓には曇りガラスがはまっている。家全体が錆びた赤色をしていて、レンガの隙間を何かの植物の蔦が這っていた。
(可愛いおうち……。)
十二歳の少女らしく素直に思った美香だったが、生憎それをそのまま口に出せるほど素直ではなかった。
「可愛い家だねえ……。」
何の気負いもなく言ってのけた王子を軽く睨んでから、美香は木製のドアに向かった。
コンコン。
「あの、どなたかいらっしゃいますか?」
家の中はしん、と静まり返っている。木々のざわめきと高い鳥の鳴き声がやけに寂しく響いた。
しばらくすると、タッタッタと軽い小さな足音が聞こえ、ガチャリ、とドアが開かれた。
細く開いたドアの隙間から、きょとんとした顔の女の子がこちらを見上げている。
美香はかがみ込むと、優しい笑顔を浮かべた。
「こんにちわ。あの、お父さんかお母さん、いる?」
こんな小さな子供に領域の出口を聞いても、とても知っているとは思えなかった。そう聞くと、くるくるした茶色の長い髪をいじりながら、女の子は、
「……いないよ。私、意地悪な叔母さんと二人暮らしだもん。」と、ぽつんと呟いた。
なぜか奇妙な印象を受ける返事だった。意地悪な叔母さん、と言い切ったことがおかしいのだ、と美香は気づいた。普通たとえ意地悪でも、単純に「叔母さんと二人暮らし」と答えないだろうか?まるで、童話の中のセリフみたいだ。
「そうなの。」
努めて平静を装いながら美香は言った。
「じゃあ、その叔母さんを呼んでくれる?」
女の子はしばらく何も言わず、食い入るような目で美香と王子を見上げていた。美香がどうしたものかと困り始めた時、女の子は不意にひっそりと囁くように言った。
「……私を迎えに来てくれたの?」
「え?」
「そうでしょ?意地悪な叔母さんから私を救い出しに来てくれたんだよね?」
美香はなんと答えてよいかわからずオロオロしたが、王子の方は落ち着いたものだった。
もくもくと煙が立ち昇る方角に向かうと、一軒の小さな家が見えてきた。
レンガ造りの一階建てで、屋根には煙突が、丸い窓には曇りガラスがはまっている。家全体が錆びた赤色をしていて、レンガの隙間を何かの植物の蔦が這っていた。
(可愛いおうち……。)
十二歳の少女らしく素直に思った美香だったが、生憎それをそのまま口に出せるほど素直ではなかった。
「可愛い家だねえ……。」
何の気負いもなく言ってのけた王子を軽く睨んでから、美香は木製のドアに向かった。
コンコン。
「あの、どなたかいらっしゃいますか?」
家の中はしん、と静まり返っている。木々のざわめきと高い鳥の鳴き声がやけに寂しく響いた。
しばらくすると、タッタッタと軽い小さな足音が聞こえ、ガチャリ、とドアが開かれた。
細く開いたドアの隙間から、きょとんとした顔の女の子がこちらを見上げている。
美香はかがみ込むと、優しい笑顔を浮かべた。
「こんにちわ。あの、お父さんかお母さん、いる?」
こんな小さな子供に領域の出口を聞いても、とても知っているとは思えなかった。そう聞くと、くるくるした茶色の長い髪をいじりながら、女の子は、
「……いないよ。私、意地悪な叔母さんと二人暮らしだもん。」と、ぽつんと呟いた。
なぜか奇妙な印象を受ける返事だった。意地悪な叔母さん、と言い切ったことがおかしいのだ、と美香は気づいた。普通たとえ意地悪でも、単純に「叔母さんと二人暮らし」と答えないだろうか?まるで、童話の中のセリフみたいだ。
「そうなの。」
努めて平静を装いながら美香は言った。
「じゃあ、その叔母さんを呼んでくれる?」
女の子はしばらく何も言わず、食い入るような目で美香と王子を見上げていた。美香がどうしたものかと困り始めた時、女の子は不意にひっそりと囁くように言った。
「……私を迎えに来てくれたの?」
「え?」
「そうでしょ?意地悪な叔母さんから私を救い出しに来てくれたんだよね?」
美香はなんと答えてよいかわからずオロオロしたが、王子の方は落ち着いたものだった。
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