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キャッチボール

[288]  るー6  2009-06-15投稿
プロローグ
「ありがとうございました!!」
大きな返事と共に、野球の練習が終わった。
「今日はちょっときつかった。マジ疲れたし。」汗をふく飯岡龍吾。
野球部のエースピッチャーとして頑張っている。短めの髪型、普通の体格、だけどバカ。といういたって普通の石田中の二年生である。
「じゃ、一緒に帰ろうぜ。」
友達から誘われ、龍吾は「おぅ!」
と言って、帰ろうとした。
その時、
「龍吾!体育倉庫のカギ閉めてこい。」
顧問の鈴木に言われ、龍吾はしぶしぶカギを受け取る。
「分かりました。」
それを見た友達は、お気の毒そうな顔をして、一目散に帰っていった。
「お、おい!」
一緒に帰るって言ったじゃねぇか…
部活を終え、一人で帰ることになった龍吾。
グラウンドを見回してみた。
すると、フェンスの向こうに、ある一人の少年が悲しそうに座っていた。それを見た龍吾。
「誰だあいつ。」
少年のもとへと走ってゆく。
なんだろう。体が勝手にいってしまうような、そんな感覚だった。
「君…は…」
何とかしゃべれた。しかし、返答がない。
「あっ、もしかして、野球の練習見てた?」
かすかにうなずいた少年。
「そうかぁ。野球…好き?」
「……」
「そうでもない?」
「……」
少年はさらに下を向く。どうしたのだろう。
「ただ、ここにいるだけ?」
少年はその言葉に少し反応した。
「違う、違うんだ。」
「えっ?」
「死にたい。」
そんなことを考えていたのか…
俺はこの時、心に決めた。
絶対こいつを死なせないって…
「キャッチボール…するか?」
「いや…しない。」
「つまんねえじゃん!教えてやっから!なっ!」ねぇ、龍吾…
いつからだっただろうね。僕と龍吾が友達になったの…
よく覚えてないや…
でも、これだけは覚えているんだ。
その日が、春の暖かい日だったこと…。
ふと、野球を見に行ってみた。ただ、それだけだったら…これから先、何も言うことがないんだけどね…。

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