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猫物語その25

[460]  α  2009-06-16投稿
 猫八に 凄まれ問い詰められた子猫は 半泣きになりながら 竹内さんに保護されるまでの いきさつを語りました。

 んじゃまぁ、手っ取り早く そのじぃさまに損害を補償してもらぉうかいのぉー

 と、猫八は さも嬉しそうに歯を見せて笑います。
 腹の底の方から クツクツという笑い声が聞こえて来るようです。

 だ、ダメにゃ!

 子猫は自らも驚くほど厳しい口調で言い放っていました。
 猫八も猫丸もキラキラと輝くトパーズ色の目を まんまるく見開いています。

 ぅ、ぅぅ゛
 だ、だめにゃんにゃー...。
 そんにゃことは させにゃいにゃ...!..絶対にだめにゃ!

 引くに引けない子猫は ためらいがちだった言葉を連ねるうち、意志を固め断言するに至ります。

 お爺さんには大恩があるんにゃ!仇で返すような真似、死んでもできにゃいにゃ!弁償にゃら自分でするにゃ、なんでもするにゃ!

 もはややけっぱちと表現して差し支えないでしょう。子猫は殺さば殺せ的に猫八に迫ります。
 しかし、幼い子猫が開き直った程度で発揮される気迫なんぞで引き下がるような猫八ではありません。

 せやけぇー。んじゃー半年ほどマグロ漁船にでも乗ってもらぉうかぃのー。

 にゃー?

 猫八、子供じゃ無理だろ...
 それより これで手を打った方が簡単じゃねーか?

 極悪ヅラMAXで子猫を遠洋漁業へ奉公に出そうとする友を冷ややかに諌め、猫丸は鈴と共に床に散らばった小さめの煎餅を拾いあげ 猫八の前に置きました。

 こ、これは...。

 蛙の煎餅。
 そうだろ、チビ。

 子猫に反論できる余裕は ありません。
 そうにゃ!本当に それを食べたザリガニさんの外殻が あっという間に治ったんにゃ!

 あいつら、高機能食品を おやつに食べるような変わり者だが 技術は確かだ。
 これがあれば おめーの お袋さんも元気に なんだろ。もらっとけ。健康はマグロじゃ買えねぇぞ。

 わかってる!...

 落ち着き払った猫丸の態度が気に食わず、つい意地を張って きつい返事をしてしまい猫八は内心焦ったものの 猫丸が気にした そぶりも見せないので ますます腹に据えかね、口を つぐんで考え込むふりをして了承するタイミングを計ります。

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