時と空の唄14-5
心臓が一度ドクンと脈打つ。
そのうちに目の前は真っ白になり、それと同時に今起こっていることを遂に頭が理解した。
再会した日と同じに。
目の前の銀がグラリと揺らいだ。
けれど、今彼女を死から守る呪いはない。
「シーラ!!!!」
彼女を貫いた剣は既に彼女の体から抜かれ、その反動で彼女の体は勢いよく床に倒れた。
流れ出る血が床を朱く、紅く染めていく。
それはまるで、あの夕日の差し込む小さな小屋の中の再現だった。
彼女のか細い体を抱き上げると血の気の失せた白い顔に小さな笑みが零れる。
「ケガ…ない…?」
「バカ、今ケガしてんのはお前だ…」
「そう…だね…。
…ね、ランス」
「もうしゃべるな」
「ランス」
「しゃべるなよ…っ」
「 」
「シーラ……ッ」
銀髪の隙間から、光が消えた。
百合のように白い頬に泪が伝っていた。
腕が力なく体の上から滑り落ちた。
冷たくなっていく彼女の体を優しく、しっかりと抱き締める。
僅かに残る暖かさは彼女の優しさそのものだろうか。
その温もりを逃すまいとするかのように今度は強く抱き締めた。
彼女の軽い体を抱き抱え、ラウフたちが気を失い倒れている所に静かに横たえる。
「…ごめん、ここで待っててくれ。」
柔かな銀髪を撫でてそう言うとランスォールはカロウドと対峙するように立ち上がった。
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