神の丘〜歩み〜?
トレイの上にはロンググラスに入ったアイスコーヒーが二つあった。
ルームサービスの青年がダイニングテーブルにコーヒーを一つ置く度に、“カラン”と氷がグラスにあたる音がした。
「‥で、頼まれていた情報の結果でも聞きたいの‥憂牙」
ルームサービスの青年は、固められた髪を崩し、ソファーに深く腰をかけた。
「ああ。何か解ったのか?」
「相変わらず無愛想な言い方ね。このご時世、愛想よくなきゃやっていけないのよ。世のサラリーマンはそうやって頑張ってるんだから!」
「…何の話だ?」
「‥まあいいわ。あなたが探していた“レメク”って言う人物、言われたとおりの街にアクセスしてみたけど、何処にも彼の痕跡は無かったわ。病院の出生履歴さえも…ただ」
「ただ?」
「“グレイ・ヴィルソン”と言う人物は存在しているわ。出生地はバルク‥まあ、幼少時代はとって付けたような経歴だけど‥彼は10年前に国家の秘密警察訓練所で最も生存率が低い部隊『エデン』に志願しているわ」
「エデン?」
「国家秘密警察は反体制分子や他国によるスパイの排除を行う政治警察。秘密警察‥“SPS”は、主に、軍の特務機関・情報の情報機関・スパイの防諜機関で成り立っているわ。そして、最も謎に包まれている暗殺機関『エデン』。それぞれを育成するSPS訓練所でも、あまりに危険で辛いエデンに志願する者は、ほとんどいないそうよ。これは噂だけど、訓練所に入隊する時点で、その隊員の全ての過去は抹消されるとも言われているわ‥」
「全ての過去…」
「政府の暗殺機関を知った上で“入隊”という言葉が存在しても、“除隊”という言葉は存在しないわ。言ったわよね、“訓練所で最も生存率が低い部隊”って。現在の正式隊員の数、わずか5名。大半の志願者は、訓練所の卒業までに命を落とすそうよ。生きたければ卒業するしかない。途中で息絶えても、過去は抹消されているから生きた痕跡は残らない‥本当、国にとって都合のいいシステムだこと。まっ、志願者の大半は、国を追われる犯罪者ばかりだけどね」
「犯罪者が警察に入れるのか?」
つづく
ルームサービスの青年がダイニングテーブルにコーヒーを一つ置く度に、“カラン”と氷がグラスにあたる音がした。
「‥で、頼まれていた情報の結果でも聞きたいの‥憂牙」
ルームサービスの青年は、固められた髪を崩し、ソファーに深く腰をかけた。
「ああ。何か解ったのか?」
「相変わらず無愛想な言い方ね。このご時世、愛想よくなきゃやっていけないのよ。世のサラリーマンはそうやって頑張ってるんだから!」
「…何の話だ?」
「‥まあいいわ。あなたが探していた“レメク”って言う人物、言われたとおりの街にアクセスしてみたけど、何処にも彼の痕跡は無かったわ。病院の出生履歴さえも…ただ」
「ただ?」
「“グレイ・ヴィルソン”と言う人物は存在しているわ。出生地はバルク‥まあ、幼少時代はとって付けたような経歴だけど‥彼は10年前に国家の秘密警察訓練所で最も生存率が低い部隊『エデン』に志願しているわ」
「エデン?」
「国家秘密警察は反体制分子や他国によるスパイの排除を行う政治警察。秘密警察‥“SPS”は、主に、軍の特務機関・情報の情報機関・スパイの防諜機関で成り立っているわ。そして、最も謎に包まれている暗殺機関『エデン』。それぞれを育成するSPS訓練所でも、あまりに危険で辛いエデンに志願する者は、ほとんどいないそうよ。これは噂だけど、訓練所に入隊する時点で、その隊員の全ての過去は抹消されるとも言われているわ‥」
「全ての過去…」
「政府の暗殺機関を知った上で“入隊”という言葉が存在しても、“除隊”という言葉は存在しないわ。言ったわよね、“訓練所で最も生存率が低い部隊”って。現在の正式隊員の数、わずか5名。大半の志願者は、訓練所の卒業までに命を落とすそうよ。生きたければ卒業するしかない。途中で息絶えても、過去は抹消されているから生きた痕跡は残らない‥本当、国にとって都合のいいシステムだこと。まっ、志願者の大半は、国を追われる犯罪者ばかりだけどね」
「犯罪者が警察に入れるのか?」
つづく
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