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ハーフムーン (44)

[912]  2009-06-17投稿
男は喜びに満ち溢れた表情で、薄い紙で出来たそのポイントカードを、高々と掲げていた。

しかもその手は、『ついにここまで辿り着いた』と言わんばかりに、感動で震えていた。

「でも何でこちらのラーメンが、エコなんですか?」ミユキがクールに尋ねる。

男は涙を堪えるような表情で、鼻水をすすりながら答えた。

「へぇ…では、ウチのラーメンをご覧くだせぇ」
そう言って男は、カウンターの下から生麺を取り出すと、それをそのまま器に放り込み、水道水を注ぐと、最後に醤油らしき物をかけて、二人の手元に力強く差し出した。

「完成です」
男は静かな面持ちで言った。

「こ、これは…何の真似です!?」
ミユキはすっかり慌てふためいていた。

かつてミユキにとって史上最高のラーメンを作ってくれた男が、いま目の前で史上最低のラーメンを差し出したからだ。

そんなミユキの失望を気にもせず、男はこう答えた。
「作る過程で火を使わない!これが究極のエコラーメンでありやす」

どうぞ、と男は念を押した。

しかしミユキは『違う違う』といった表情で、首を横に振ると、手を付けること無く、そっと器を男の元に返した。

ミユキとマモルの二人は、二番目の小屋へと移っていった。

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