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真実 29

[342]  彰子  2009-06-23投稿
 母親からの電話で淳は凍りつきそうになるのを必死で押さえ、家に戻ってきた。
 亜子はただ事でない淳の表情に驚き何があったか聞いてきた。
 淳は弟が実家から黙って姿を消した事を話した。
 「とにかくお母さんのとこに行かないと…。」
 と亜子はまだ会ってない、母親の不安と弟の身の上を心配した。
 翌日淳の社内預金を出し、6人で車に乗り込み、淳の故郷へ向かった。4人目の子供はまだ半年も経っていなかったが、元々いた亜子の三人の子供達も淳の事や祖母にあたる淳の母親と弟を心配していた。
 車で4時間近くかけて、やっと淳の実家に着いた。 淳はとりあえず皆をファミリーレストランで待たせ、一人で実家のベルを鳴らした。
 弟がいなくなったのがわかってから、母親は淳の指示で警察に捜索願いを出していた。
 「母ちゃん大丈夫か?警察から何も連絡ない?」
 と、淳は自分の心配を押さえながら言った。
 「何も…心配で夜も寝れないで、血圧が上がって、きついのよ…」
 母親は疲れた表情を隠せずにいた。
 淳は母親を気遣い、皆で来た事は話したが初めて会う再婚相手の亜子に会うだけの与力がない事を悟り、何時間か過ごして実家を後にした。
 亜子は淳の表情から母親の胸中を悟って、そのまま何も言わず、父親の墓参りをして行こうと淳に提案した。
 故郷の街並みも新しい店が出来、少しずつ様変わりをしている。
 淳は故郷を亜子や子供達に案内した。卒業した小学校、中学校、高校を懐かしさに浸りながら、皆の心配を少しでも軽くしようとし、花や線香を買って墓参りに行った。
 亜子と子供達は墓に一礼をし、初めましての挨拶をした。少し汗ばむ時期になり、草も伸びていたので、皆で、墓の掃除をした。
 淳は不思議な気分になった。亜子といると何でもどんな時にも力が出てくる。子供達も嫌がる事なく、楽しんで墓の掃除をしている。
 亜子ありがとうと、淳は心の中で呟いた。

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