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ケツァルとコアトル

[567]  α  2009-06-23投稿
地を這う生き物は
天に羽ばたく生き物の影が
頭上を かすめて行ったので、
自分の上を あの食べ物が
飛んで行ったと知りました。

地を這う生き物は
天を羽ばたく生き物に向かって牙を むき
牙の先から透明な
毒の数滴を
糸を引かせて撒き散らします。

されども当然の ことながら
天に羽ばたく生き物たちには
牙も毒も何も
全くもって届きません。
天に羽ばたく生き物は、
地に這う生き物を見下ろして
あるいは少しも気に留めず
気づかず気にも留めずに
去って行きます。

地を這う生き物は
岩の上を のたくって
水辺で羽を休める その生き物を
背後から、卑屈に気配を消して近寄り
哀れで愚かな その生き物を
牙に捕らえて毒で黙らせ
うまうまと丸呑みに するのです。

地を這う生き物は、
自分の存在が
生命を脅かすものと
思われ、事実生命を
脅かす存在であるために
忌まれ嫌われ避けられることを
知っているので、
卑屈に気配を消して物音たてずに
自分は存在しないと
偽って
自分は存在してると
宣誓できずに
岩で のたうち
地を這い進んで行くのです。

もう二度と、
天に その身を
差し延べることは
叶いません。

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