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子供のセカイ。29

[461]  アンヌ  2009-06-24投稿
「なっ…!」
震える手で切れた頬に触れ、指先に付着した赤い液体を見て、メガーテは髪を逆立たせた。
「小娘が、一体何を…!」
「……!!」
美香は不意にわかった。ホッとすると同時に、どっと力が抜けるような事実だった。
光の子供の能力は、ここでも失われてはいなかったのだ。想像の力。今まで試してみもしなかった事が悔やまれた。もしもっと早くに気づいていたら、山で大怪我を負うこともなかったろうに……。
一方魔女は、美香が光の子供だということがわからないらしかった。動揺し、狼狽えるのは今度はメガーテの方だった。
「お前も魔女だったのかい!そうなんだろう!?」
「……。」
「答えろ小娘!」
メガーテは家を揺るがすような大声で吠えると、テーブルの前の椅子をつかんで振り上げた。たちまちのうちに椅子は燃え上がり、美香は火かき棒を今度は消火器に変えねばならなかった。
(このままじゃ埒があかないわ。でもリリィを連れ出そうとしてるのは本当だし、一体どうしたら――。)
美香が悶々と考えてる内に、メガーテは今度は鉢植えを針だらけの鉄球に変え、美香に投げつけながら叫んだ。
「リリィは渡さないからね!あの子の力は役に立つ。一生この家に閉じ込めて、死ぬまでこき使ってやるのさ!」
それを聞いて、美香は思わずカッとなった。
「勝手なこと言わないで!あなたにどんな権利があるって言うの!?リリィみたいな小さな子の自由を奪ったりして!恥を知りなさい!!」
「フン、でかい口を叩くな小娘!お前も弱らせてじき、私の下僕にしてやるわ。二人共私のために生き、私のために死ぬのだ!」
(なんて奴…!!)もう我慢の限界だった。美香は怒りに任せて火かき棒を長槍に変えると、「うわああ!」と叫びながら魔女の左胸を突いた。
魔女の巨体がぐらりとかしいだ――かと思えば、そうではなかった。
「…クッ!ククククッ!」
メガーテは体を折り曲げて笑っていた。その手はしっかりと槍――もとい火かき棒をつかんでいた。
ぐいっと火かき棒を引っ張られ、美香は魔女の前へ引き寄せられた。メガーテの大きな赤ら顔が見えたのは一瞬で、左の頬に強い衝撃を受けて美香は床に体を打ち付けた。
「っ…!」
殴られたのだと気づいた時には、腹を蹴り上げられていた。

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