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ほんの小さな私事(28)

[391]  稲村コウ  2009-06-26投稿
「そうそう。お風呂入れてあるから、入るなら入っておいで。その間にご飯も用意しちゃうからね。」
「すみません。あれもこれもとやっていただいてしまって。ただ、任せきりなのも悪いですし、後で食事の準備ぐらいは手伝わせてください。」
今まで、家政婦に生活回りの事を任せていた事で、それに慣れきってしまっている身だが、このまま人任せな状況になるのも嫌だったし、私としても、家事に関して疎いのをなんとかしたいという思いからそう言ってみたのだが…。
「お嬢ちゃんはそこまで気を回さなくてもいいのよ。勉強とか習い事とか、色々忙しいんだろうし、若いうちには、そういう方を優先しなくちゃね。…ああ、ただ、うちのバカ息子みたいに、なんだっけ…コンピューターゲームとかばっかりになっちゃダメだけどねぇ。ま、その辺は、あなたなら大丈夫そうよね。」
こちらにやってきて一週間ほど経っているが、その間ずっと、藤沢さんが家の面倒を見てくれている。自分の家の事もあるだろうし、それを考慮して、手伝いの進言をするのだが、いつもその度、今のように言われてしまう始末。
「そうですか。では、お風呂、先にいただきます。」
「ああ。しっかり汗流しておいで。あんたみたいな美人さんは特に、身だしなみしっかりしないとね。」
結局この日も、やんわりと、手伝いの申し出を断られてしまった。私は軽くお辞儀をして藤沢さんに礼の意を見せたあと、自分の部屋に戻り、荷物を置いて、風呂に向かった。

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