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キャッチボール 第10話

[223]  るー6  2009-06-28投稿
龍吾は僕の手をさっと掴み、
「行くぞ。」
一目散に走った。
何にも考えずに。

気づいたら、石田中の門の前に来ていた。
「大丈夫か。」
「…少し痛いかも。」
「ごめん!本当にごめん!無理に走らせて。」
龍吾は土下座までした。「大丈夫だから。そんなことしないで。」
すると龍吾は、
「助けてやりたかった。みーくんを…守ってやりたかった。」
龍吾は話を続ける。
「守ってやりた…いや…守りたかった。」
「えっ?」
「最初に会ったときから。」
その時、一台の車がやってきた。
僕の…お母さんだった…「まだ岬。キャッチボールしてたの。」
「その後遊んでたから。」
「その時は電話一本くらい入れなさい。」
「こんばんは。」
龍吾は僕の母親に挨拶した。
「顔…なんでこんな傷だらけなの。」
母は龍吾に挨拶を返すこともなく、僕の顔を心配した。
「……。」
僕は黙っていた。すると、母は龍吾を指さして、「あなたが、飯岡龍吾くんね。」
「あ、はい。」
「昨日知り合った…そう聞いたけど、挙げ句の果てにはこうして暴力をふるうのね。」
「えっ…いや…。」
「言い訳しても無駄。もうこれからは、二度と岬に会わないで下さい。」「え…」
「会わせません。」
そうすると、僕を車の中に引きずり込んだ。
車内はもう家族の温かさ、あの家庭の姿は、いつものように冷たく、無口な家族の姿へと変わった。
後ろを見てみると、うなだれた龍吾が、とぼとぼと帰って行くのが見えた。
母のせいだ…。

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