キャロルの秘密 27
惠子が古賀の姿を認めた瞬間、彼女は一言「直君」と呟いた。
20分後、二人は裏通りにある、喫茶店にいた。
「でも、直君とは正直まいったな。俺も40歳だぞ」
「ごめんなさい。だって、私にとっては、ずっと直君だったから」惠子は照れ臭そうに古賀を見つめた。
「まあ、仕方ないか。で、今は何をやっているんだい?」気になっていたことを古賀は率直に尋ねた。
「出版社に勤めてるわ」
「以外だな。まさか一人じゃないだろう?」
「もう、10歳になる子がいるわ」
子供は逡巡した。
10歳となると、10時年前を思い出してみた。自分はミュージシャンとして、一戦でやっていた頃だ。
「これも、何かの運命かしら」惠子がぽつりと言った。
古賀は運命ねえと呟いた。
その時、唐突に惠子が時計に目をやり「会議に遅れちゃう」と言った。
古賀は気掛かりなことが一つあった。
今日、これが惠子との20年振りの再会だが、この先はと考えていた。
すると惠子は「ここは私に持たせて」と財布から二千円と一枚の名刺を取り出した。
「これが私の連絡先」
「いいのか?」と言って、古賀は名刺を受け取り、内ポケットに仕舞った。
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