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二人の長い夜?

[927]  森田  2006-07-19投稿
自分の声がかすれていると実感する。よく意味が取れなかったらしく、竜一は不思議そうな顔をした。


竜一『え?』

拓也『奴が校舎に入ってきたんだよ』

竜一『奴?』

拓也『昨日の奴だ』

竜一『マジ?』

拓也『間違えるはずないだろう?あいつのヤバい眼がこっちを見ていたんだからな』

グラウンドに視線を落とした直後、落下したような絶望感が体を支配した。眼が合った。
赤く光っていたかどうかなど覚えていないが、眼が合ったことだけは覚えている。


竜一『どうすんだ?』
拓也『逃げる。全力でな』

竜一『できるのか?』
拓也『できる』

そうでなきゃ、今度の死体は俺たちになるだけだ。

どうやって逃げる?

竜一『おい。なんか変な音しないか?』

拓也『変な音?』

そういえば固い杖で床を叩いているような音がする。

竜一『ヒールかスパイクの音か?』

音が聞こえやすいのなら大丈夫だ。

拓也『急ぐぞ』

竜一『あ、ああ』


何者かが校舎に入って来ていることがわかったためか、神妙な様子で頷いている。


早足に階段までたどり着くと、足音が途絶えた。

拓也『…?』

俺たちが下へ降りているのに感づいたのか?んな馬鹿な。

拓也『…』

今は三階。これから二階に降りようとする位置だ。廊下が見える。

拓也『…っ』

眼が合った。なぜ相手の眼が光って見えていたのかわかった。赤く、鋭い眼。まさか、人間じゃない!?

拓也『降りるぞ』


竜一『…!おう!』

全力で階段を駆け下りる。


硬い音はメチャクチャな速さで追って来ている。


竜一『オイオイ…』

廊下へ走り出して数歩。硬く重い音が真後ろから聞こえた。

振り向けば、丸くなっている黒い物体が見える。

腰ぐらいまでの高さしかないそれは、赤い二つの眼をともしている。人間じゃないな、マジで。


拓也『さて、どうする?』

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