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最期の恋(1)

[594]  MICORO  2009-07-06投稿
かぎりとて 別るる道の 悲しきに いかまほしきは 命なりけり
―源氏物語「桐壺」より―\r

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更衣室で鼻歌混じりで着替えていると、主任の夏川涼子が出勤してきた。
「あらっ?吉村婦長。今日は随分ご機嫌ですね」
「そうでもないわよ。整形のドクターって本当にヤブなんだから。患者さんより、こっちの血圧が上がりそうよ」
私は鼻歌を聞かれてしまった照れ隠しで、わざと難しい顔を作って見せるが、心が弾んでいるのをごまかしきれない。どうしても顔が綻んでしまう。
「婦長。今日は例の息子さんが来るんですね?」
涼子は私の苦しい言い訳はサラっと聞き流して、勝手に納得した。ちょっと悔しいけれど、実は涼子の言う通りだ。
「やっぱり、わかる?」
「そりゃ、わかりますよ。謹厳実直な吉村婦長ドノが鼻歌を歌うなんていったら、息子さんと逢う以外に考えられないですから。何年一緒に働いてると思ってるんですか」
全く口の減らない涼子だが、私にとっては最高のパートナーだ。病院内ではたいていのことは、視線のやり取りだけで間に合ってしまう。
「困ったもんだわね。デートもおちおちできやしない」
「ウフッ。だって婦長って『孝一君命』みたいなんだもん。息子だなんて言いながら、案外、婦長のいい人だったりして…。アハッ。でも孝一君、本当に婦長が担当で良かった。あの子、お母さんがいないから、婦長のこと実の母親みたいに慕ってたし…。退院してからも、毎週のように婦長の手料理をご馳走して貰えるんですから。なんだか孝一君が羨ましいなぁ」
私は涼子のカンの良さにドキッとしたけれど、そこは年の功でさりげなく切り返す。
「馬鹿言わないの。だいたいコウが、私みたいなオバサンを相手にするはずがないでしょう?ホントにメシだけがお目当てなのよ。育ち盛りの高校生なんだから。それより涼子、内科の浅野君とはどうなってるの?エッチだけじゃなくて、たまには晩御飯くらいは作ってあげてる?」
私に痛い所を突かれて、涼子がペロリと舌を出した。
「まあ、その辺はテキトーに、それなりに…。あたし、あんまりお料理好きじゃないし…。っていうか、なんであたしと浅野先生の話になっちゃうんですか?とんだヤブヘビだわ」
涼子が頬を膨らませる。私は笑いながら肩を叩いて言った。

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