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最期の恋(23)

[486]  MICORO  2009-07-12投稿
あとどれくらい、生きられるのかわからない。
だけど、もう手術は受けない。
両の乳房を喪い、放射線に焼かれ、抗がん剤の副作用に苦しみながら、病院でチューブに繋がれて生きるなんてお断り。
大好きなコウに愛されながら、きっぱりと命を終えるのだ。
看護師としては失格だけど、最期まで『おんな』として生きていきたい。
決心すると、嘘のように心が落ち着いた。
ドクターが入院手続きを勧めるのを断って、家に帰った。
まずは、コウに電話をかけ、今週末のデートをキャンセルする。
コウは訝しがったが、病院の勤務スケジュールが調整できないからと、無理矢理納得させた。
これからは身辺の整理をしなくてはならない。完全にかたがついて、笑顔を見せられるようになるまでは、コウには逢わない。
事実を知ると、きっとコウは取り乱す。
そんなコウは見たくない。
それに、コウから手術を受けるように懇願されたら、抗う自信はない。せっかくの決心は簡単に崩れ去ってしまうだろう。
十年前、夫に説得された時のように…。


翌日、私は退職願をだした。
理由はあくまでも『個人的な事情』で押し通した。
婦長の後任には、夏川涼子を推薦した。もちろん院長に異存はなかった。

突然の人事に、涼子は私を再三問い詰めた。
私は笑って、相手にしなかった。
「良かったじゃない。私が婦長で居座ってたら、涼子は一生主任だったのよ。私を追い越すなんて不可能なんだから」
冗談まじりに言うと、涼子は泣きそうな顔で言った。
「あたし、そのほうが良かった。だって、まだまだ婦長に教わりたいことがいっぱいあったし…。退職してからも、相談に乗って下さいね」
私はやんわりと、それを断った。
「わたしね、退職したら引っ越す予定なの。だからそれはできないわ。
そのかわり、残りの二週間で、あなたを徹底的にしごいて、一人前の婦長にしてあげる。私の全てを、あなたに叩き込むから、覚悟してついて来てね」
涼子は何かを感じ取ったのだろう。
それ以来、決して理由を訊ねようとはしなくなった。
あれほど嘘好きの涼子が、コウとの事すら聞きたがらなかった。

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