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ほんの小さな私事(47)

[306]  稲村コウ  2009-07-15投稿
正直な所、呪いと言われても、信憑性が無いと思ってしまうのが普通の人の思考だと思う。
しかし私は、自分が持っている能力と、それによって、今まであった体験を踏まえ、呪いという言い方はともかく、弓道部に何かあったのは本当だろうと感じていた。
「詳しく教えてもらえないでしょうか?」
私がそう言うと、山崎さんは、少し間を置いてから喋り始めた。
「まずは去年の秋ぐらいじゃったか。この弓道部の主将が、ここの練習場で他校の生徒を招いて練習試合をしておったのじゃが、その際、どのような経緯があったかまでは聞かされておらんが、怪我をしてしもうてのぅ。腕に深く切れた痕が残っておったらしく、全治三ヶ月ほどのものだったそうじゃ。それはそれで騒ぎにはなったが、そこで一段落ついたのじゃが…。」
山崎さんは、そこまで一気に喋り通したあと、一息入れて間を置いてから、再び話を続けた。
「が。事はこれでおわらなかったのじゃ。主将が怪我をしたというあとも、何人かの部員が似た怪我を立て続けに負うなど…。まあ、主将のそれと比べたらかすり傷程度だったんじゃがな。それ以外にも、部員の間で酷く熱の出る風邪が流行ったり、身内に不幸が起こるなど、様々な事があっての。これは単なる偶然の一致でしかないのかも知れんのじゃが、部員全てに何かが起こってしまったという事で、次第に呪いの話が広まっていったのじゃ。」
「そして、その呪いの噂に怖くなった部員が徐々に部を抜けていった…?」
「察しがいいのぅ。その通り。部員が次第に部から離れて行き、最終的に最後まで残ったのは、去年の三年生じゃ。当然、既に彼らは卒業してしまい、挙げ句には、顧問の唐突の転勤。して、ここはもぬけの殻になった、という訳じゃ。」

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