「今夜？」

さすがにミケーロも驚きの声を上げた。

「早ければ早いほどいい。ああ、あとな頭以外の人間は殺すな」

「なぜ？」

「朝起きたら組織の一番上の人間が死んでいる。いつ、だれが、どうやって殺したのかすらもわからない。そんな状況を作り出すんだ。残された連中の恐怖を考えて見ろ。B級ホラー映画の主人公にでもなった気分だろうな。そしてそいつ等は生き証人として世間に俺たちの畏れを広める」

「けれどそれじゃあ俺たちが殺したってわからなくないか？」

「いや世間の鼻は敏感だ。自然と真実は語られる。それにな謎を少し残す方が不気味さを引き立たせるんだ」

ミケーロは慎重にチェーザレの言葉に耳を傾けた。チェーザレのいうことはいつもおおむね正しい。自分よりもずっと先の事柄まで見透かしている。そのことを認めているがそれでもミケーロは自分自身でも一度考えてみる。他人に寄りかかり考えることを放棄することを彼は是としなかった。
「おまえの美点だな」

しばらく黙ったままのミケーロをみてチェーザレはぼそりとつぶやいた。
「考えはまとまったか」
「ああ」

「人選はおまえに任せる。おまえに同行するものだが、おまえの好きなように自由に選べ」

「いや、俺一人でいく」

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